カモシカのように巨石飛び越え崖を疾走するバイク~「2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第1戦関東大会」観戦
「こんなモータースポーツがあったんだ!」
先週日曜日は、一日驚きまくりそして興奮しまくった。
誘ってくれたのは、教習所に通っている頃からいろいろアドバイスをもらっていたバイクインストラクターのO氏。同僚インストラクター2人と毎年観戦しているという真壁トライアルランドの「2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第1戦関東大会」に連れていってくれた。
真壁と言えば茨城県中部にある「真壁石」で有名な町。
自分は見渡す限り広大な平地の茨城南部(波崎)で育ったが、筑波山を越えてこの辺りまで来ると、こんもりした山が至る所に。石切り場だったのかなというそんな山林の一角がトライアルの会場となる。常設の施設ではないそうで、受付もこんな場所。サーキット的な建物もあるのかと思っていた自分の予想とは全然違った。
ちなみに「トライアルって何?」という方はここの解説を。
トライアル競技は、専用のオートバイを駆り、コース途中に設けられた採点区間(セクション)で、いかに減点されることなく走り抜けられるかを競い合います。早くゴールする必要はありませんが、決められた時間を越えてしまうと、所定の減点を課せられることになります。減点が最も少ない、つまりはミスの最も少ないライダーが優勝となります。
自分が初めて知ったのは2015年秋に訪れた青ヶ島。そこでお世話になった方とバイクの話になった際に「トライアル」という競技があることを初めて知った。
そして会場へ。
「相当アップダウンの道を歩くことになるよ」
と軍手をくれるOさん。そういう情報は事前に下さいよ~。観戦コーナーみたいなのがあって、そこに立ってずっと見てるのかと思った。実は前々日に軽いぎっくり腰もどきをやり、ガラスの腰をかばっての観戦ツアー参加。これはストックと日焼け対策が必要だったな。
さっそくコースが現れた。
黄色いラインまでが観戦客が立ち入っていいところ。コースぎりぎりまで近付ける。大会に参戦するバイクも停まっていて、選手らしき人もいた。
「観客が最も間近で見れるバイク競技」とOさんが話していた意味がわかった。
まずはスタートポイントに。
一斉スタートではなく、1分おきに1台ずつ。MCの方がここで選手の名前を読み上げ、目標などを語らせてスタートになり、そこからトータルの制限タイムが開始する。
トライアルは走行時間で競う競技ではなく、用意された各セクションを基本1分以内に走り、その際のミスによる減点のトータルが最も少ない人が優勝となる。今回は11箇所のセクションが用意され、さらに上位10人だけが参戦できる「SS(スペシャルセクション)」というものが最後に待ち構えていた。
私たちが到着したのは9時頃だったが、その時には大半の選手は既にスタートをしていた。国際A級スーパークラスのチャンピオン級のスタートを見送り、さらに国際A級のスタートも最後まで見て、さっそくセクションに向かった。道が厳しい・・・なんか国際徒歩クラス参戦って感じ。
そしてたどり着いたのは第7セクション。
え!?バイクが飛んでる!?
いきなり度肝抜かれた。
これは写真じゃ伝わらないので、ぜひ動画で見てほしい。
なぜこんな大きな巨石に飛び乗れてしまうのか。
足を付かないまま停止していられるのか。
前輪を跳ねさせるだけでの方向転換!
凄すぎる!神業すぎる!!!
この選手は、あと一歩でゴールだったが、タイムアウトかもしくはマシン後退で「失敗」の笛がなってしまった。
こちらも同じセクション。
最後、崖を飛び乗ってすぐの停止・方向転換がもう信じられないほど見事。
本田のチームの小川選手。ディフェンディングチャンピオンとのこと。
「ガッキー!」と至る所から歓声があがっていた。
まるで・・・
崖を駆け上がるカモシカのよう!
そしてまた移動。
国際A級スーパークラスの選手たちを追いかけて回っている人たちが多いので、その集団と同じ回り方をするとどこも混みあってしまい、いいポジションで観戦ができない。そんなわけで、全セクションを順番に観ることはせず、いくつか飛ばしながらちょっと先回りして動いた。気付けば結構な高台だ。
会場にはごろごろと巨石。
それに陣取って観ている人も。
もちろんコース内も巨石だらけだ。
最後の動画は、優勝したヤマハのチームの黒山健一選手。
スタート前は闘志みなぎる表情でコースをじっと睨んでいた。
こんな長い崖を一気に登ってしまう。
ぴょんぴょん弾むバイク。
身体と一体化してしまっている。前輪が持ち上がるのはハンドル握っているのでまだわかるのだが、ニーグリップもできない車体で後輪をあれだけ跳ね上げて方向転換できているのが不思議で不思議で・・・。
選手を補助するパートナー役の人が「45(あと45秒)」など大きな声をかけているのもわかる。選手と一緒にコースを念入りに下見してどう走るかを戦略をたて、バイクの進行方向で指示を出す。もちろんトライアルの選手で、出走している選手より高い実力を持っているコーチ役の人も多いそう。走るのは1人だけど実際はそんな二人三脚になっていて、大声で叫ばれる指示や鼓舞が聞けるのも見応えにつながっている。
最後、崖からずり落ちそうになるのを必死に支えて方向転換をしようとする選手に、他のチームの人からも声援が飛び、観客からも必死の声があがる。実はスポーツ全般的に全く興味がない自分だが、今回だけはかなり興奮した。
↑これ本当にすごいので見てほしい。
重力はいったいどこへいってしまったんだ。そんなシーンだ。
クレージーすぎる!!!
最初にこんな場所をバイクで走ろうと思った人、これをモータースポーツに仕立てちゃった人も。
この山の地権者も最初に「バイクの大会をやりたい」と打診された時は、「え?」って感じだったろうなあ。
動画ばかり貼り付けてしまったが、少し会場風景も。
建物は一切ないが、スポンサーだろうか。テントを張っての販売コーナーがあった。
コンビニおにぎりやドリンク、あとカップ麺やうどんなども買える。
高台にシートを敷き、カップ麺を食べながら遠目観戦している人たちも。
セクション内以外は基本的にどこで観戦してもよく、下から見上げる人もいれば、岩をよじ登って真横や上から観戦する人も。観戦客エリアとコースの間はビニールテープで仕切られているだけなので、バイクが突っ込んできたり落ちてきたりする危険性もあるが、そこは見ている人の自己責任なのだろう。
これはヤマハのピット。
12箇所のセクションを1から順番にまわって2ラップ(周)するのだが、その合間に選手がここに戻ってきていた。
これがトライアルのバイク。
シートはなく最小限の構造。
岩に激突したり、激しく崖から落ちたりしているが、それでも次の瞬間すぐにエンジンがかかるから驚かされる。
巨石にガンガン激突するので、エンジン下のガードは分厚い。
一眼レフカメラなどあればよかったのだろうが、iPhoneだけなので連写はこれが精いっぱい。
そして最後、上位10選手によるSS(スペシャルセクション)が始まった。
今までもずっと「こんな場所を走るのか!?」と目を丸くし通しだったが、このコースはもうありえないような作り。真壁トライアルランドのSSはそのダイナミックさで有名なのだとか。
11位以下の選手たちもみな集結し、コースすぐ脇で観戦だ。
いやー、すさまじかった。
こんな世界があるのかと、驚きまくりの一日。
「こういうのも一度見ておくといいでしょ」
いやほんとに。
バイクって、バランスや操作スキルを極限まで上達させると、こんな走りすらできてしまうものなんだと初めて知った。
北海道ツーリングの時に未舗装急斜面で転倒して滑り落ちたのがトラウマになっていたけど、これ観たらあんなの、コケたうちにも入らなかったなと。海岸線のカーブ砂だまりで転倒したりもしたけど、あれだってちゃんと自分がバランスさえとれていれば、超余裕でクリアできたんだよなと。
「足付かないでぴたっと停止してるやつ、あれだけでもできたら格好いいですよね!」なんて調子に乗って言っちゃったけど、まずは「ふらつかない超徐行」ができるようにしなくては。バランスだけで停止なんて遥か先だ。小回りUターンも真剣に練習しよう。
シーズン開幕したばかりのトライアル。
この後も各地で大会が開催されるそう。
機会があればまた行きたい。