• 広告を利用しています/紹介製品の価格・スペックは記事作成時点のものです

第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(3)

写真記事の続きを書く前にひとつだけ。

今朝、飛行機で東京に戻ってきた。
しかし、大会が終わって2日半が経過した今も、自分にとって100kmハイクは終わっていない。続いている。完歩したシューズを履いたまま、隣には肩紐が切れかけたリュック。なぜか?

実は・・・

   
鍵がなくて家に入れない!!!
 
 
北海道のホテルから送った荷物に、自宅の鍵を入れっぱなしにしてしまった!(涙

団地管理室にマスターキーはなく、鍵屋に相談したら「1万円以上かかる」とのこと。佐川急便に電話すると、明日の朝には荷物がつくらしい。悩んだが、これ以上の出費は避けたいので、近所のネットカフェで過ごすことにした。

昨日から仕事に復帰してる参加者がほとんどだろうに、いまだ運動靴はいたままの自分っていったい・・・。久々の自己嫌悪。

とりあえず、たまっているメール返信が一段落して疲れがどっとでたので、気分転換兼ねて、ブログを書くことにした。

第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(1)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(2)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(3)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(4)


+++


写真

長らく歩き続けてきた国道を左に曲がった瞬間、緊張が走った。
かなり暗い。。。

それでも、手前のほうは街灯も少しあり、両側には建物もあった。
しかしその先は???

しばらくは、ヘッドランプも使わず歩いていた。
暗いところは嫌いではない。普段も、夜は最低限の明かりしかつけずに暮らしている(単に同居してる鳥たちが早寝なためなんだけど)

しかし空が完全に暗くなると、足元の地形や、歩道と車道の境目すらわからなくなってくる。足も疲れ、座る場所もないので、歩道にそのまま座りふと後ろを振り返ると仰天。

遠くのほうにぼーっと浮かび上がったのは、

いくつもの青い光。
左右にゆらゆら揺れている!!!

ぎょっとした。

しかしずっと見つめていると、それがどうも歩いている参加者の一行なことがわかった。最近はLEDランプが主流なようで、その時後方にいた大阪グループは、全員がそれを使っていた。

自分もつけないとなあと、やっとヘッドランプをとりだす。

しばらく大阪グループの後ろにくっついて歩いていると、また前方に人影(というか反射タスキ)。
かなり重症なようで、杖にしがみついて体を折り曲げ、足を完全に引きずってしまっている。それでもちょっとずつ前に進もうとしている。見ているだけで痛々しく、励ます言葉すらでてこず近くにいたのだが、それはそれで相手にとっても気になってしまうのだろう。

「次のチェックポイントで会いましょう!」

名前も知らないその人は、自分に向かって言った。

「うん。がんばりましょう」

そんなことしか言えず、その人を置いて歩き出す自分自身にもどかしさを感じた。

あそこまで苦しい状況で、この坂を上りきり、あの山頂で会えるのだろうか?
自分だったらきっと無理だ。・・・つか、あんな状況で足を前にだすことはできない気がした。

サポートの人達が何人か待機している給水場に辿り着いた。
この先は、本格的な上り坂が始まるようだ。

椅子があったので座らせてもらうと、根っこが生えてしまった。
不思議と立ち上がれない。

「ゆっくりでいいですよ。30分そこにいた人もいますよ」

わかるなあ・・・その気持ち。
だって進行方向、こんな感じなんだもん。

写真

全く灯りがないカーブの登り道。
ヘッドランプを向けたところにある反射板だけが、きらりと光をはなつ。
それ以外は、真の暗闇だ。

空は雲で覆われ、星は見えず、ほぼ新月のため、月影もない。
もともと田舎出身だから、都市育ちの人と比べれば、暗い夜に慣れている。

でも、ここまで暗い中をひとりで歩いたことはない。

10分ほど足を休めた後、サポートの人達の声援に送られながら、島を離れ、再び暗い海の中に泳ぎ出た。

「次のチェックポイントでは、カニ汁が待っているから!頑張って!」

カニ汁かあ。おいしそうだなあ。
タラバガニかなあ。それとも毛がにかなあ・・・?

写真

たまに明るくなるのは、車が通り過ぎる瞬間。
でもその後は、再び闇が厚く立ち込める世界に。

ヘッドランプの当たっている場所だけが見える。
歩道と車道の間の白い線をたどるように前進する。

坂道。
ときどきカーブ。
このカーブを、あと何回繰り返すんだろう???

カニ汁って、何蟹なんだろう?
(まあどうでもいいんだけど)

それにしてもこの坂、
 
 
「いつ終わるんだ???」
 
 
終わりが見えない登り道は、疲れた足にかなりこたえる。
途中で吐き気すらもよおした(ナッツの食べすぎかもしれないけど)。

それよりもどかしいのは。

写真
 
 
写真が撮れない!!!
 
 
ここで気付く。
そっか、フラッシュ使えばいいんだ!
(何故かそのことに気付くまでに1時間もかかった)

写真

おっしゃ♪
撮影成功!

デジカメのフラッシュの到達距離は結構あるようで、かなり遠くの反射板までが光ってくれた。ちょっと嬉しくなって、まわりの風景を撮りまくる自分。

写真

前後に全く歩いている人がいなかったからいいようなものの、もしいたら「なんであそこだけピカピカ光ってるんだ?」と不思議に思ったかもしれない。

↓そこには病的なブロガーがいたんです。

写真

そんなことをしていたら、突如あたりがすーっと暗くなった。
睡魔も近づいていたので、一瞬自分の意識が落ちたのかと思ったけど、落ちたのはヘッドランプだった。

電池切れ。

わお!

本当の真っ暗闇。
暗いのは怖くないけど、ライトがないと、方向すらわからなくなるほどだ。

リュックを下ろし、さっきコンビニで購入した電池を探す。

あった!

次にヘッドランプの蓋を開ける。
学生時代から使い慣れたやつを持ってきていてよかった。

古い電池を取り出す時に、どっちがプラスでどっちがマイナスかを慎重に確認。

慎重にやらなくちゃ。
慌てず、ゆっくり。ゆっくり、慌てず。

次に新しい電池を取り出す。
ヘッドランプと電池カバーを持っているので、電池開封作業は片手のみ。

ボトッ。

案の定、一個落としてしまった。
真っ暗なアスファルトの上に。

ヴッ!やばっ!

慌てず、ゆっくり。ゆっくり、慌てず。
ここで、坂を転がってゆく単三電池を追いかけるのは、道化すぎる。

幸い、しばらく地面を触り続けていたら、足元に落ちていた電池が手に触れた。
ただそのハプニングのおかげですっかりわからなくなった。プラスはどっち?

四苦八苦していると、天の助け、サポートの車が通りかかり、そのヘッドライトが窮状を救ってくれた。

「ヘッドランプ、どうかしましたか?」
「電池交換してました。大丈夫です!」

よかった~っ!

写真

そんなこんなで摩周湖への暗い道を歩き始めて2時間半、ついに展望台のチェックポイントに辿り着いた。

長かった。

最後の1時間は、「きっとあのカーブを曲がったら、チェックポイントの灯りが見えるはず」と思い続けていた。車に乗って巡回しているサポートの人達が、「あともうちょっとだから!頑張って!」と、大声で叫び続けてくれていたためだ。

前が見えないこと、この先の距離がわからないことは、不安にもなるが、希望にもなる。

「そっか、あとちょっとなんだな」

サポートの人達の真剣な顔と声は、そう思わせてくれる。
実際には、全然「あとちょっと」じゃなかったりするんだけど、自らも100kmを歩いた経験がある人達、どういう掛け声をかければ、歩いている人が頑張れるのか、よく知っているのだろう。

展望台には大きなテントも張ってあって、中には布団が敷かれ、たくさんの人が横たわっていた。
みんなそれぞれ、必死にこの坂を登ってきたんだなあ。

写真

待望のカニ汁。
毛がにだった。

途中、気力が切れそうになったとき、気を紛らわすために、頭の中でカニの歌を歌っていた。もちろんそんな歌は知らない。思いつく限りのカニの名前をあげながら、適当にメロディーをつけて歌っていただけだ。

カニ汁、おいしかった。
体が温まった。

写真

他の参加者も、ふらふらになりながらあがってくる。
サポートの人がかけよって拍手をしながら。
手をとりあって喜び合いながら。

上までは絶対無理なんじゃないか。
すれ違いながらそう思った人も、渾身のパワーを振り絞って辿り着いた。

すごいよ!
ほんと、すごいよ!!!

そんな思いは、苦しい上り坂をずっと心配なまなざしで見つめ続け、でも「もう無理だよ」「ここで止めたら」とは絶対言わず、「大丈夫」「まだ頑張れる」と励まし続けてきたサポートの人のほうが強いだろう。抱き寄せるように迎えるサポートの人達の目が、なんというか母親みたいな嬉しさと感動に満ち溢れていた。今朝までは会ったこともない、互いに名前も知らない人達の間に絆が生まれている。

絶対にゴールする!と力を振り絞る、歩き参加者。
そしてそんな参加者を「絶対にゴールさせてあげたい」と思うサポートの人達。

よし、自分もカニ汁パワーが消えないうちに出発だ!!!

ということで、先に着いて休んでいた市川先生に声をかけてもらったタイミングで一緒に出発した。ここで横たわってしまったら、根性のない自分、二度と歩き始められない気がしたので。

写真

市川先生は、さすが!
日中と変わらぬしゃきっとした姿勢とリズムよい歩きで、にっこり笑顔。
巡礼の話など、再びいろいろな話をしていただいた。

でも実際には、次のチェックポイントで先生の足をマッサージをしたサポートの人によると、太ももはかなり熱を持ってしまって、肉体的には相当つらい状況だったみたいだ。

「そんなとは全く気付きませんでした」

後に自分はそう言った。
これが精神力ってものの差なんだなと思った。

そして。

登りよりつらい下り道。
もろ、膝にくる。

何度も休ませてもらいながら、懸命にストレッチ。
無事にこの長い道を下りきらなくちゃ。

というか──。

ここまで来たらもうリタイアなんてできない。

自分だけではなく、その時歩いていた人全員がそう思っていた。近くにはいない他の人達のそんな思いも、その時は暗闇を越えてシェアできていた気がする。途中途中で声をかけてくれるサポートの人達を媒介として。

市川先生と歩いていたのも、自分にとっては非常にラッキーだった。
眼下に見える街のあかりの美しさ、途中で頭上に広がった満天の星空。

「これは最高だね!」
「本当ですね!」

そう感嘆しながらぼーっと眺めていると、何度でも気持ちがリセットできて、まだまだ頑張れる気持ちになってくる。オーラとか気とかって自分にはよくわからないんだけど、強力にポジティブな人は、こんな状況でもまわりの人をポジティブにさせる。そのことはすごくよくわかった。

写真

とその時。
前方かなり先を、動物が横切った。

猫?
尻尾が長くて太いので、いたちに見えたが、実際にはキツネだった。

「先生、動物!」

道路の反対側に消えたかと思ったけどそうではなく、前方には青い目が2つこちらをじっと見ていた。驚いたことに、その光る目は、そのままこっちに向かって走ってきた。

おおっ!

写真

横を通り過ぎていったそのキツネをヘッドランプで捉え、シャッターを切るのに成功した。ちょっと距離が離れ、小さくしか写らなかったのが残念だけど。

写真

これは何を撮ろうとしたんだろう?
星空かな?

写真

そして何時間かの下り坂の後、ようやくチェックポイントに辿り着いた。
マッサージをするサポートの人も、指先に全身の力を込めて真剣。

マッサージがダメな自分も、パンパンに腫れた足を少しでもほぐさなくてはと、一生懸命ストレッチ。

写真

「下りはあとちょっとですから!」ゴールも近いです!頑張って!との声援に見送られながら歩き始めると、空がだんだん青みを帯びてきて、両側の木を黒く浮かび上がらせた。ちなみに時間は3時2分。

写真

そしてこの写真。
信じられないかもしれないけど、なんと3時45分。
北海道の朝は早い(初めて知った・・・)。

長い長い夜が終わった頃、つらかった長い長い坂もようやく平坦になった。
国道にでれば、最後のチェックポイントがすぐある(はず)。そうすれば、ゴールは(多分)あとちょっとだ!!!

写真

線路にでた。
山を下りたんだ!!!という実感が沸いてくる。

(先頭集団を歩いていて既にゴールした人2人が、主催者の加藤さんと一緒に、車で先生が心配で・・・とやってきたので、その時に記念撮影した中の一枚/一応、「歩いてきた山を振り返っているポーズ」してみました)

写真

雨が降っていた前日の朝とはうってかわって、青空が広がる。

写真

最後のチェックポイントのところで、朝日が昇った。
長い長い夜が、夢の中の出来事みたいに思えた瞬間。

あと少し!


>続く


第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(1)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(2)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(3)
第一回100km歩け歩け大会 in 川湯温泉郷(4)

好奇心を刺激するイベント参加レポート

健康&ダイエット&美容の記事一覧