究極のチャレンジ精神に魅せられる~2017全日本トライアル選手権シリーズ第6戦中部大会
人生二度目の・・・
トライアル観戦!
トライアルほど「挑戦」という言葉がぴたり合う競技はないんじゃないか。そう思ってしまう程、今回も至近距離から選手の挑戦を眺めているだけでゾクゾクしまくるミラクルな内容だった。
トライアルって何?という方は、まずこの動画を見ていただきたい。
▼全日本トライアル選手権中部大会 黒山健一選手(1分)
走行しているのは日本を代表するトライアルライダー黒山健一選手だ。
崖あり巨大な岩あり、急斜面での方向転換ありだが、足を一切地面につかず1分以内に走り切っている。審判が「0」と書かれた小さな白いボードを掲げているが、それは減点対象となる足つきが一度もなく走り切ったということ。
自分が初めて観戦にいった3月の茨城・真壁の関東大会では、黒山選手が見事優勝をおさめた。
●カモシカのように巨石飛び越え崖を疾走するバイク~「2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第1戦関東大会」観戦(前回の参加レポート)
今回は第6戦で中部大会。シーズン中に開催されるのは7回なので終盤戦、会場は愛知県岡崎市の山中にある広大な「キョウセイドライバーランド」という施設だ。企業向けの安全講習の他、四輪ジムカーナやトライアルなど大会会場としても使われるそう。
今回はヤマハさんの招待企画で、乗り物好きブロガーの方々と一緒に参加した。過去にもバイクやボート関連で何度か開催されていたが、私は初参加。研修所を使っての初心者向けトライアル基礎知識講座に、監督が同行してくれての解説付きツアーと、「モータースポーツをもっと多くの方に楽しんでほしい」というヤマハさんの思いが伝わってくる充実内容の観戦企画だった。
●ヤマハ発動機株式会社「レース情報」
●ヤマハ発動機レース情報Twitterアカウント(@yamaha_race)
オートバイ競技「トライアル」とは
詳細については上記ページを見ていただきたい。
通常オートレースというと、決められたコースを走りタイムを競うものが一般的だが、「トライアル」で競うのはライダーの技術。
コース内には岩場や崖などの自然・人工の障害物があり、それを高度な操縦技術でクリアしながら足を付くことなく制限時間内に走り切るというもの。
減点は、1回の足つきが1点、2回の足つきで2点、3回以上の足つきが3点です。マシンから降りてしまったり、セクションの外へ出てしまった場合、マシンが後退した場合、あるいは足つき中にエンジンが停止したりすると、失敗とみなされ5点減点となります。また、セクションを1度の減点もなく走りきることを「クリーン」といいます。
コース内には制限時間1分(全日本トライアル選手権の場合)の「セクション」と呼ばれる採点区間が多数作られている。今回はその数12箇所。セクション1から順番に回り、12のセクションを回り終えたらもう一周という2ラップ。基礎知識講座では、トライアル同様イギリスが発祥の地である「ゴルフ」に例えられていたが、それをイメージすると近いかもしれない。
セクション図です。 pic.twitter.com/Z8Gou0R5X8
— MFJ全日本トライアル選手権 (@MFJ_TRIAL) 2017年10月7日
上の図の中に数字が書き込まれているのがセクションで、そのほか「SS1」「SS2」とあるのは、最後上位10選手だけが走ることができる「スペシャルセクション」となっている。
全日本トライアル選手権
実はトライアル、南は大分から北は北海道まで各地に競技開催可能な会場がある。全日本トライアル選手権は2017年は7回開催され、今回の中部大会は第6戦。私が3月に真壁で観戦したのは初戦の関東大会だった。
2017/3/12 | 真壁トライアルランド(茨城) |
2017/4/16 | 湯浅トライアルパーク(和歌山) |
2017/5/14 | 玖珠トライアルヒルズ (大分) |
2017/6/11 | HIROスポーツパーク(鳥取) |
2017/7/16 | わっさむサーキット(北海道) |
2017/10/8 | キョウセイドライバーランド(愛知) |
2017/10/29 | スポーツランドSUGO(宮城) |
選手は「国際A級」「国際B級」の2クラス、そしてレディースに分かれており、今月末に開催される第7戦を終えた段階でチャンピオンが決まる。
真壁の初戦では黒山健一選手が優勝し、2位が小川友幸選手だったが、第5戦が終わった段階での総合順位は1位が小川選手、2位が黒山選手、そして3位が野崎史高選手。
野崎選手は、先日川越で「モトクロスごっこ」という体験イベントに参加した際、ゲストとして来ていて、スゴ技を披露してくれた方だ。
●オフ車初体験!ドロドロになったけど超楽しい!「モトクロスごっこ」
観客がコースに入り込んで間近で観戦できる
基礎知識講座では、「トライアルの魅力」として下記6点があげられていた。
- ライダーとの距離が近い
- ライダーに声援が届く
- 斜面を登る、岩を乗り越える、といった普段見られないようなテクニックを味わうことができる
- 戦術・戦略
- 失敗・成功が比較的分かりやすい
- レース全体を観戦できる
トライアル観戦の大きな魅力のひとつは、選手と観客の距離が極端に近いということだろう。もちろん走行区間はテープが張られ立ち入り禁止となっているが、ぎりぎりまで近づくことができ、最短距離なら2メートルほど先の場所をバイクが通過する。
沢を通過すればその水しぶきも飛んでくるし、場所によっては頭上からタイヤによって跳ね上げられた泥が降ってくることも。初めての観戦でまず驚くのは、そんな競技者との距離の近さだ。
スタートを待つ選手の真剣な表情も間近で見ることができ、エンジンの唸り声も、車体下の分厚いアンダーガードが岩に激突する音も、すぐ目の前から響いてくる臨場感。バイクが好きな人はもちろんのこと、そうでない人もかなり興奮することだろう。
レースは朝8時台から午後15時ころまでずっと続いており、12か所のセクションでは常に競技が行われている。どうまわるかは自由なので、応援している選手と一緒に回り続ける人もいれば、一か所に陣取って次々とスタートを切る各クラスの選手の走りをじっと順番に観戦している人もいる。
真壁は山の中に作られたコースで、観客もアップダウンある道を移動しないといけなかったが、キョウセイドライバーランドは、外周に沿った形でセクションが設置されているため、比較的平らな場所の移動でよく、またぬかるみなどもほとんどなく楽だった。
ピットの周辺も自由に歩き回ることができる。
時間帯によっては、1ラップまわった選手が戻ってきて、マシンのメンテナンスをしている場面に出くわすことも。
選手と「マインダー」のセクション攻略
同じセクション内でも、選手のクラスによって通過するポイントは違う。よく見ると「IAS」「IA」「IB」などと書かれた色違いの矢印型のマークが多数立てられていて、それによって難易度が変わる。またセクション内外を区切るテープも張られていて、そこからはみ出せば失敗となり減点5点だ。
巨大な岩場や切り立った崖、急斜面での方向転換を強いる樹木や切り株などなど、どう攻略するかを決めるのが、選手と、各選手に1名つく「マインダー」と呼ばれるパートナー。
基礎知識講座では、ゴルファーとキャディのペアに例えられていた。マインダーは競技中コース内に立ち入ることもでき、先回りして目指すポイントを指示したり、残り時間を読み上げたり、時にバイクが急斜面で選手とともに滑落しそうな危険な場面ではバイクをつかんで支えるなどして選手を守る役割を担っている。
今回、私たちのツアーが追いかけて応援していた黒山選手のマインダーは、同じくトライアル選手として活躍する実弟の黒山二郎氏。
ちょ...????????
— 黒山健一 (@ken1kuroyama) 2017年10月9日
ジロ君...完全に、木になりきってるがな??????????
Photo Yusuke Origuchi pic.twitter.com/k96CyRtSeL
セクションを上り下りしながら、斜面の角度や岩の形、地面の状態など念入りに吟味する黒山選手。
ただ走るのを観るだけでなく、急斜面を実際に歩きながら選手とマインダーが真剣な表情で協議する様子を見ることができるのもトライアルの楽しいところだ。
不可能を可能にするチャレンジ
「こんな巨岩をどうやってバイクで登るんだ」
「あんな急斜面で方向転換するのか!」
と、毎回新しいセクションに辿り着くごとに驚愕する。
不可能としか思えないようなハードルを見事クリアした時、会場中から大きな拍手が飛ぶ。
もちろん成功時だけではない。
不可能としか思えない難易度高いポイントに果敢に挑戦し失敗した選手のチャレンジ精神にも大きな拍手が送られるし、急斜面でマシンがずり落ちかけながらも、制限時間いっぱいになる最後の最後まで態勢を変えようと必死に粘り抜いた選手にも、タイムアップの笛とともに大きな歓声がかけられる。
トライアルは、各セクションでの持ち時間が1分と非常に短いことや、選手がすぐ目の前で走っていること、マインダーが選手にかける声もすべて聞こえることなどもあり、セクション内でのテンションや選手の闘志が強烈に伝わってくる。
単なる観戦者ではいられない。
誰もが熱い応援者になってしまう。
まだ2回しか見ていないが、正直、モータースポーツにまったく興味なかった自分がはまりかけている理由はここだなと思う。
驚愕しまくりの技術
本当にもう
「すごい」の一言。
軽量とは言え70キロを超える車体のバイクを、まるで下半身と一体化しているかのように巧みに華麗に操って、岩を飛び越え、垂直に見える崖をいっきに登り切り、岩から岩へと飛び移って、狭い急斜面でぴょんぴょん飛び跳ねながら方向を180度変えてしまう。
言葉で伝えることは絶対にできないので、何がそんなに「驚愕しまくり」なのかは動画で見てもらえたら。
▼全日本トライアル選手権中部大会 SS2 黒山健一選手(1分19秒)
この動画は、最後の「SS(スペシャルセクション)」と呼ばれる特別なセクション。
コンクリートの筒、巨大なタイヤといった人工物を並べて作ったセクションで、特にコンクリ筒を斜めに重ねた障害、そして2メートル以上の垂直のコンクリ壁は、トップクラスの選手陣でも苦戦する高い難易度だ。
正直、失敗して落ちたら命も危ないのでは?と我々ド素人はハラハラしてしまうが、監督によると「上手な選手は落ち方もうまい」のだとか。
国際A級スーパークラス・黒山健一選手
今回のツアーでは、ヤマハファクトリーレーシングチームに所属する黒山健一選手を追いかけ応援しながらコースをまわった。
上の写真は今年3月の真壁の時のもの。
コースを見つめる真剣な表情と強い目力、そして何より不可能を可能にする高い技術で、走っていても走っていなくても、周囲の観客の目を釘付けにしてしまう選手だ。
▼2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第一戦関東大会(58秒)
こちらも真壁の時の動画。
崖を駆け上り、登りきったところでぴたり止まれるのがまるでマジックを見ているよう。
▼2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第一戦関東大会(44秒)
岩から岩へジャンプしながら同時に方向転換までしてしまう。
神業というのはこういうことを言うのだろうなあと。
▼【黒山健一選手】2017全日本トライアル選手権第6戦中部大会(13分38秒)
これは、関東大会でも多数の素晴らしい動画を公開していたsumimitumaru氏のもの。
プレスのビブス着用している人のみが入れるゾーンからの撮影なので、ジャンプシーンも真横からで迫力満点だ。最後のSS2のタイヤジャンプでは、背後に動画撮影をしている私自身の姿も入り込んでいた。
#JTR 全日本トライアル第6戦中部大会。黒山健一選手は2ラップ目の第1セクション、クリーンです! pic.twitter.com/D3urqdxZB0
— ヤマハ発動機レース情報 (@yamaha_race) 2017年10月8日
下からの観戦のほうが迫力はありそうだが、上からもまた新鮮。
私たちは昼からの観戦で、見ることができたセクションも一部だけだったが、詳細な展開がヤマハの公式サイトで公開されていた。
●全日本トライアル選手権 IAスーパー | ヤマハ発動機株式会社
あとで本人のTwitterアカウントを見たら、前日からトラブル発生しており、この日も途中でマシントラブルなど苦戦続きだった模様。他の方のブログ記事に骨折という記述も見かけたが、身体のコンディションが万全ではなかったという話もあるようだ。
全日本トライアル...中部大会??
— 黒山健一 (@ken1kuroyama) 2017年10月8日
3位でした????
ただ、ただ...残念です?????????? pic.twitter.com/snNOSZx9Zl
残念ながら今回は3位で逆転とはならなかったが、表彰式ではこんなコメントをしていた。
「出直します。マシン含め身体もしっかり仕上げて最終戦頑張ります!このままで終わるわけにいかないし、最終戦勝ってシーズンオフ入るのが一番気持ちいいんで、やはりしっかり狙っていきます」
今月末、SUGOで開催される最終戦・東北大会に期待したい。
Twitterのヤマハ発動機レース情報アカウントでは、表彰式後の本人のコメント動画が公開されている。
#JTR 全日本トライアル第6戦中部大会。黒山健一選手は今、表彰式を終えて、競技をふりかえってくれました。最終戦に向けて闘志を燃やす黒山選手です。応援していただいた皆様、ありがとうございました。SUGOでの最終戦もご声援どうかよろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/SJWVyTXIca
— ヤマハ発動機レース情報 (@yamaha_race) 2017年10月8日
迫力満点のSS(スペシャルセクション)観戦
SSは2コース用意されていた。自分たちは外周コース上に人工物を並べて作った2つめのSSに早めに向かい場所取り。そのおかげで1日の最後の白熱シーンをベストポジションでがっつり見ることができた。
それにしても・・・
なんという・・・
クレージーな障害物。
一体これをバイクでどう走る・・・というか飛ぶというのだろうか。
想像もつかない。
そこに選手たちがやってきて、腰に手を当て、あるいは背中で組み、じっと見つめる。
シミュレーションをしているのだろうか。
イメトレをしているのだろうか。
かと思えば、こんな楽しそげな顔も。
一体どう飛ぶんだろう。
その風景を、両側の観客も期待感いっぱいで至近距離から眺め続ける。
そして遂に始まった最後のセクション。
飛ぶ!
飛ぶ!
目の前を「飛ぶ」バイク!
会場からは何度もどよめきと歓声、そして大きな大きな拍手がたちのぼる。
こちらも動画を撮ったので、ぜひ見ていただけたら。
本当に・・・
凄かった!!!
最後に表彰式。
9月にスペインで開催された「トライアル・デ・ナシオン」の報告会も行われた。小川友幸選手、黒山健一選手、そして今回は出場していなかった藤波貴久選手の3人がチームを組み、見事世界3位を獲得した。
+ + +
参加した知り合いが毎回「楽しかった!」「はまった!」と絶賛するヤマハさんのブロガー招待企画。
自分は今回が初参加だったが、「モータースポーツをもっと多くの方に楽しんでほしい」という主催意図ががっつり伝わってくるもので、私自身、前回以上にトライアルという競技の魅力にはまった。
過去の企画に参加した知人が何人もその後バイクや小型船舶の免許を取得しているが、今回実際に参加してみてその理由がよくわかった(ちなみに自分はどちらも取得済み)。
私自身2年前まで名前も知らなかった「トライアル」。
身近にファンなどがいないと、なかなか観戦に行くきっかけは生まれにくいかもしれない。
会場も決して交通の便がいい場所ではないので、足が必要だ。
ただ一度体験すると、知らなかった新しい世界が広がる。
自分も3月にトライアル観戦したのがきっかけで、4月には埼玉・川越の荒川河川敷に作られた「オフロードヴィレッジ」で、「モトクロスごっこ」という初心者や免許を持っていない人でも簡単なモトクロス体験ができるイベントに参加をした。
●オフ車初体験!ドロドロになったけど超楽しい!「モトクロスごっこ」
まだ未体験のオフロードを走ってみたいという新たな目標も生まれた(初心者なのでまずは簡単なフラットダートから)。
トライアル、そしてモトクロスなどのレース情報は、日本モーターサイクルスポーツ協会の公式サイトに掲載されている。もし少しでも興味が湧いたら、ぜひ誰か誘って行ってみてほしい。きっと・・・
仰天するから。
●カモシカのように巨石飛び越え崖を疾走するバイク~「2017MFJ全日本トライアル選手権シリーズ第1戦関東大会」観戦
今回ツアーご一緒させてもらった方のブログ記事
●土とエンジンの匂いの中で響く爆音と挑戦する姿にドラマをみた!【全日本トライアル選手権】
●元うなぎや Neo: 2017年全日本トライアル選手権の「東海(キョウセイドライバーランド)」で初めてのトライアル観戦をしてきました!
●迫力バイクライディングが目前にせまる!興奮のトライアル観戦 #ヤマハバイク | TOOLBOXーLIFELOG
●毛糸だまのSTEW: 人間離れした技はまさに超人――大迫力に驚いた「全日本トライアル選手権観戦ツアー」
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初トライアル観戦!JTR・全日本トライアル選手権@キョウセイドライバーランドへ♪②レース観戦編~|ひろたんママ♪のブログ☆★