秋の白州蒸留所
先週末に山梨で実施された燻製キャンプの1日目、全員ですぐ近くの白州蒸留所に行った。自分は2006年に一度連れてってもらったので5年ぶり(その時のレポート)
ここは訪れると入口で「ウイスキー蒸溜所ガイドツアー」に申し込んで、ガイドさんと一緒に蒸留所内の核施設を見学してまわる。
平日は1時間毎・土日は30分毎にある。
私たちは、通常ツアーコースとちょっと違うところも見せていただけるということで、専用の帽子着用になった。なんか蒸留所の人になった気分♪
製造工程に沿って見学する。
まずは「原料」。
ウィスキーとビール、焼酎はどう違うのか。
実はビールもウィスキーも大麦が原料で、それから麦汁を作って発酵させる過程はけっこう似ている。ただしウィスキーと焼酎には「蒸留」という過程があり、ウィスキーはさらに「熟成」過程が非常に長い。
大麦。
麦畑ってきれいなんだよね。
何年か前に北海道で黄金色の畑を見て結構感動した。
(そこはビール原料を作っている場所だったけど)
そして「仕込」。
麦や米のような穀類を原料とするお酒の場合、酵母は原料をそのままで発酵させることができません。そこで麦の場合は、発芽した麦(麦芽)に含まれる酵素によって、でんぷんを糖分に分解する「仕込み」という工程が必要になります。細かく砕かれた麦芽が温水とともに仕込み槽に送り込まれ、でんぷんが糖分に変わった甘い麦汁が得られます。ここで使われる仕込み水が麦汁の味わいを大きく左右するため、蒸溜所は良い水の湧くところに立地しています。(サントリー公式サイト「ウイスキーミュージアム」より)
巨大な仕込み槽には、麦芽と温水。
どろどろっとした麦汁が作られている。
仕込み槽と発酵槽は同じエリアに並んでいて、
ウィスキーの香りからは程遠い、どちらかゆうと、漬物か何かのようなにおいが漂っていた。
こちらが発酵槽。
これまた巨大な木桶がいくつも並んでいる。
私たちは建物の上部に取り付けられた通路上を歩いていて、この木桶は、上のほうだけが見えているだけ。本当は足元より下にまだまだ高さがあるものだ。
ここ見ると、
「ウィスキーって本当に手作り感あふれる製造工程だよなあ」
と思う。
発酵は酵母が生きるためのエネルギーを糖分から得るためにアルコールと炭酸ガスに分解していく過程です。この過程ではアルコールと炭酸ガスだけではなく、様々な香味成分なども生成され、ウイスキーの骨格を決める重要なステップです。ウイスキーの発酵は約3日間おこなわれますが、発酵の最盛期には真っ白な泡がぐんぐん盛り上がってくるので、泡が溢れ出ないように発酵槽の中でプロペラを回して泡を切っています。酵母の活性が無くなるとだんだん泡が消えてゆき、酵母に代わって乳酸菌などが活動して香味の厚みが増していきます。発酵を終えると、アルコール分約7%の「ウォッシュ」ができあがります。(サントリー公式サイト「ウイスキーミュージアム」より)
木桶の中をのぞかせてもらうと、
白い泡がびっしり浮かんだ液体。
ごぼごぼと生きているよう。
そして次がウィスキーならではの作業工程「蒸留」。
中に入って見せてもらえることになった。
蒸留が行われている時は室温も非常に高くなるので中に入ってゆっくり見学ということはできず、確か一般ツアーコースでもここはガラス越しだったかもしれない。
左右にずらり、さまざまな個性的な形の蒸留釜が並ぶ。
●サントリー公式サイト「ウイスキーミュージアム」~蒸溜の話 蒸溜釜の型と構造
本場スコットランドなどの蒸留所では、こんなにバリエーション豊かな蒸留釜を備えているところはほとんどなく、一種類の蒸留釜でひとつの銘柄のウィスキーを作っているのだという。
蒸留釜の形が変わればできる製品の味も変わる。
日本の蒸留所では、いろいろなタイプの原酒を作り、ブレンドしてゆくことで、ひとつの蒸留所から何種類もの、特徴の異なるウィスキーを作っているのだという。
左右は対になっていて、左側が一回目の蒸留所に使う釜、右側が二度目の蒸留に使う釜とのこと。
形は全然違う。
手前から二番目のものは、腰のちょっと上がきゅっとくびれている。
●白州蒸留所(3)蒸留釜ってちょっとセクシー?・・・前回訪問した時のレポート
ぴかぴかきれいに輝く蒸留釜。
定期的にメンテナンスもされ、最上部のくっと折れ曲がったところは、そこだけパーツ交換したために色が違っているものもあった。
「リズとかマークとか、何か名前ついてたりするのかなあ?」
と思ったけど、そういうことはないらしい。
IT企業だと、サーバに「ミッキー」「ミニィ」とか愛称つけたりするんだけどね。「もしかして今ミッキー、死んでない?」とか。
そしてバスに乗って移動。
白州蒸留所は敷地が非常に広いので、途中バスを使う。
敷地全部で東京ドームの・・・何個分だったかな。忘れたけど5個とか10個とかじゃなかったはず。
やってきたのは「リチャー」の作業場。
これは熟成に一度使った樽を、火で焼くことで再生させてもう一回使えるようにするという作業工程。実際には今は機械でやっているそうなんだけど、職人による伝統的なリチャーを見学用に実演してくれるのがここだ。
バーナーで中に火を入れると・・・
青白い炎が樽の中をかけめぐる。
これ、樽に染み込んだウィスキーがまず燃えているのだという。
そして赤い炎に。
口部分の鉄の輪をはめているところが熱くなりすぎないよう、途中でひしゃくで少しずつ水をかけ・・・
最後は、たった一杯のひしゃくの水でこの炎を瞬時に消すという、マジックのような職人技を見せてくれた(水はなるべく少なくしたいそう)。
香りもかがせてもらう。
ちょっと甘いような不思議な香り。
そしてラストは「貯蔵」。
ここで長いものだと20年以上もの時間、静かな眠りにつく。
20年後っていうと私は・・・いくつ?
一瞬考えてすぐやめた。
この建物には、酔ってしまいそうな強いウィスキーの香りが充満していた。
中が見えるよう、手前がガラスの樽を見ながら説明を聞く。
ウイスキーは樽の中で呼吸をして、
この森に囲まれた白州蒸留所の空気を吸い込んでいく。
どこで貯蔵したかによって味も香りも違う原酒ができる。同じ貯蔵庫内でも「どこに」設置されたかで変化もでる繊細さだ。
中は暗い。
見上げると何段にもわたって樽が安置されているが、実はこの歩いている下にもまだ何段もの樽がずらり並んでいる。
ここにある原酒たちがブレンドされて出荷されるのは、今年のものもあれば、10年後・20年後のものもある。長い間右肩下がりで需要減だったウィスキー。ここ数年のハイボールブームで、増産もされているのだろう。
10年後にはどうなっているのか、20年後には何が一番飲まれているのか、全然わからない中で毎日仕込・蒸留が行われている。ウィスキー作りって他の食品・飲料とは全然違うものがあるよなあ。
最初に入った銀行を退職したのが1997年だったっけ。
2000年はその次に入った検索エンジンをやめて転職した年だな。
そして一連の見学ツアーを終え、お楽しみの試飲タイム。
さっきの貯蔵庫でウィスキーの香りにあてられているので、早く飲みたい気持ちでいっぱい♪
白州10年・12年・18年の飲み比べだ。
グラスはブレンダーが使っているもので、香りを確認しやすい作りになっている。
まずはこのまま軽く振って、
蓋を開けると同時に顔を近づけ、香りを堪能。
いい香り~♪
ついつい何回も蓋して振り、また香りをかぐを繰り返してしまった。
色の違いも確認。
琥珀色の液体は本当に美しい。
そのままストレートで味わった後は、二倍に加水して味わう。
トワイスアップにすることで感じられる繊細な味もあるのだという。
12年が好きかな。
滅多に飲む機会もない白州18年。
味や香りを言葉で表現するのは、素人にはとっても難しいのだが、プロのブレンダー達が表現した特徴を読むと、ああそうそう。確かにマンゴー的な香りというのわかる!というように納得も。
こういうの読んだり解説聞いたりしながら、鼻と舌で、液体を自分なりに分解していろいろな香りや味の要素を感じ取ろうとしながら飲むのは非常に面白い。
「味わう」という行為がこれまで以上にエキサイティングなものになってくるので。
ブレンド前の、シングルカスクの特別なウィスキーも飲ませてもらった。赤ワインのような色をしたこのウィスキーは、シェリー樽で熟成させたもの。とっても美味しかった!!!
そして一連の試飲を終えた後、
白州を使った贅沢なハイボール「森薫るハイボール」の作り方講座。
氷はぎっしり詰める。
淡い緑色のグラスはとってもきれい。
そこに白州を静かにそそぎ、
マドラーでよく混ぜる。確か13回転半。
炭酸水も静かにそそぐ。
今回使ったのは、山崎の天然水で作られたソーダ。
酒屋の他、コンビニなどでも取り扱っているところあるという。今度探してみよう。
最後にミントの葉を手のひらで一度ぱちんと勢いよく叩いてつぶして、グラスに添える。
完成!
色もとっても爽やか♪
もちろん味も♪
すーっと浄化されるような感覚が気持ちいい。
でもやっぱりちょっと贅沢すぎるハイボールな気がするけどね。
今回はあまり時間もなかったので、ミュージアムにもレストランにも立ち寄らず、最後ショップだけ見てお土産を買って蒸留所を後にした。
ショップには、燻製記の燻製道士が書いた「男の手作り燻製」も。
そうこの白州蒸留所見学ツアーの後が、燻製道士による「燻製キャンプ」。車で少し走ったところにあるキャンプ場で10種類もの燻製を作りながら、白州10年・12年を飲むという、なかなか貴重な時間を過ごさせてもらった。
白州は二度目だけど、初夏とはまた全く違った秋モードの蒸留所を満喫できた。
何回来ても楽しめるところかもしれない。