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韓国ソウルの国立中央博物館

写真最寄駅は地下鉄4号線の二村駅。同じ路線の明洞駅からは6つ、ソウル駅からは4つ目で、駅をでれば徒歩3分ほどなので気軽に行ける場所だ。

もともと景福宮内にあったものが手狭となり移転したもので、2005年10月28日オープンだったとガイドブックで読み興味を持った。特別に博物館などが好きというタイプでもないが、地方の町役場にくっついている民族資料館などでも、期待せず行ってみると実は面白かったということがあるので、そんな機会はできるだけ逃さないようにしようと思っている。

(単にソウルの寒さが限界にきていたというのもある・・・)

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駅を降りると、中学生や高校生グループが大量発生中。平日だけど今日は早く授業が終わる日とか?
手袋を忘れてしまったらしい女の子のために、親友らしき二人が両側からはさんで、ひとつの手袋にふたつの手を突っ込んで歩いているほほえましい姿などを見ながら博物館へ。コンサートか何かがあるのかというような人の流れが、実は博物館から生じているのだと気づくまでにかなり時間がかかった。

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でかい。でかすぎ。
びっくりした。

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建物中央のトンネル状になっているところの向こうには、ソウルタワーが見える。

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60という数字と2005.10.28という日にちしか読めない大きな垂れ幕。

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真ん中で上部がつながった建物が左右に建っている。その左側にチケット売り場があり、特別展示会場への入り口があった。

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大人は2,000ウォン(ざっくりで約200円)。特別展示があるときには追加料金もあるそうだ。毎月第四土曜日は無料らしい。実際にチケットを買おうとしたら、「今は無料だから」と言われ、チケットだけ渡された。

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2005年12月31日までは、オープン記念で無料らしい(管理の関係上、一応チケット売り場でチケットだけもらう)

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最初に左側の建物にある、特別展示のほうを見て回ることにした。「国立中央博物館60年の軌跡」とでもいったところか。これが結構面白い。なにせ「博物館」がテーマになっている博物館の展示なんて滅多に見ることができない。過去からの研究員の机まわりの風景などが実際に再構築されている。昔のペンと紙、書類に囲まれた四角い机から、最近の曲線を描いた機能デスクにパソコンが乗っかったものまで、たった60年の間にこんなにまるで「未来風景」のようになってしまっているのがよくわかる。

収集物を保管しておくケースであったり、過去の特別展のポスターやパンフレットだったり、ゲストのバッチであったり、よくまあちゃんと毎回とっておくものだと感心してしまう。やはりそのあたりは「博物館」気質なのだろう。展示品についていた説明書きの紙が、昔からどう変わってきたのかもわかる。そんなちっちゃなものでも歴史を感じるから不思議だ。

また、世界の代表的博物館ということで、ルーブルや大英博物館などを紹介するコーナーもあった。それらに引けをとらない、世界に誇れる博物館をわが国も遂に作ったという意味なのだろう。確かに隣の国の人間としては、うらやましいなあ・・・こんな規模のものを造っちゃえるというのは。

日本でも、国立新美術館がほぼ完成していて、来年開館予定だ。乃木坂駅に隣接した工事現場を外から見ていたことがあるが、かなりの規模の建物ができる。課題などもいろいろあるみたいだけど、楽しみだ。(ここで概観図のPDFを見ることができる

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次に右側にある常設展示のほうの建物へ。
入り口入って右側にフロントがあり、そこの一角で展示品案内用のPDAもしくはMP3プレーヤーを貸してくれる。PDAは3,000ウォン(約300円)、MP3プレーヤーが1,000ウォン(約100円)と安いので、これは絶対に借りておくべき。ハングル語、英語の他、日本語にも対応している(あと中国語があったかどうか忘れた)

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私はPDAを借りた。
首から提げるようになっており、そこにヘッドフォンがついている。ちょっと大きめ。

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真ん中が吹き抜けで天井から採光しており、落ち着いた、大きさの割にはやさしい感じの内装になっている。

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最初使い方がわからなかったのだが、すべての展示品の説明を見るというのにしておくと、あとは各展示室に入り、展示品の前にたつと、その説明が自動的に表示され、文章部分は音声で読み上げられるようになっている。つまり何もしなくてよかったのだ。

各部屋の入り口や、各展示品に、そのための小さな箱が置かれていた。仕組みはよくわからないけど、1mくらいの距離で反応するようになっているみたいだ。

「今ご覧いただいているのは・・・」

勝手に案内を始めてくれるので、プライベートガイドを雇うよりはるかに気楽だし便利。
展示品のところに書かれた説明文はハングルと英語だけだし、そんなに長いものではないので、この案内なくしては十分に楽しむことはできないだろう。

案内は、さほど堅苦しい説明ということでもなく、男性と女性ふたりの声(女性は機械による自動読み上げ)で、男性が「つまりこういうことなんですか?」と聞くと「そうです。この冠飾りは宮殿の・・・」など女性の説明が始まる。NHKのスペシャル番組なんかを見ているような感じでもあり、飽きずにまわれる。

さらに「ブックマーク」というボタンもある。
気になった展示品のところを「ブックマーク」しておくと、あとで一覧で見ることができ、また事前に公式サイトで会員登録をしている人なら、そのブックマークをインターネット上でも見ることができるそうだ。進んでいるなあ。

国立中央博物館公式サイト(日本語/会員登録できるのはハングル語サイトのほうのみかも/訪問客が博物館に要望やクレームなどを投稿できるところもあるようだ)


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ただ、中は広く、全部ちゃんと回ろうと思ったら、軽く半日以上かかる。
なので、パンフレットを受け取り、PDAを借りたら、そのまま3F一番奥にある茶室に行こう。

落ち着いた感じの喫茶店で、韓国のいろいろなお茶を飲むことができる。
私は菊茶を頼んだのだが、和菓子にも似た茶菓子が2つついてきた。ひとつはピーナツの粉をまぶしたお団子で、とてもおいしかった。

ここでお茶を飲みながら、まずはどこに何があるか、どうまわるか作戦を立てる。

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ちなみに、外にコインロッカーもあるのだが、一階入り口左手にクロークがあるので、重たいものはここで預けておくといいだろう(別にバッグを持ったまま入ってしまっても大丈夫みたいだけど)。

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なぜか普通に写真を撮っている人がいたので、自分も「本当にいいのか?」と思いつつ何回か気になるものを撮ってしまった。仏教美術などもかなり収集されている。

「印刷」「地図」といったコーナーでは、韓国の印刷技術の変遷、各家庭が自分の先祖からの血統図のようなものを作るために、木製の活字を作っていた話なども知ることができ、非常に興味深かった。そして朝鮮半島で初めて生まれたといわれる金属活字。当時の朝鮮半島の高い文化レベルを表している。(アジアと活字の長い関係

その当時の文化の象徴ともいえる貴重な金属製の活字は、豊臣秀吉による「倭乱」で、日本に略奪されてしまった。そんなあたりも音声が淡々と解説してくれる。それによって、一時的に印刷技術が?文化が?衰退した話なども。このあたりのことは、自分は受験の時に勉強をしている。世界史が好きだったこともあるが、受験した大学の世界史テストが「重箱の隅をつつく」ような設問で有名だったので、かなり細かなところまで覚えたのだ。


活字技術は中国では元の時代にほぼ消滅し、朝鮮に残るのみであった。それらの技術は豊臣秀吉が朝鮮へ出兵した際(文禄2年、1593年)に日本に持ち込み、後陽成天皇に献上した。それらに刺戟され慶長勅版(慶長2-4年)、伏見版(慶長6-11年)が木活字で作られた。伏見版で使われた木活字の一部が、開版の地であった円光寺に今もって保存されている(重要文化財)。

木活字版はおもに仏典や学術書などの開版に使われた。


Wikipedia「活字」より

歴史認識が相互の国で異なるのは当然だと、こんなところからもよくわかる。
日本から見れば「朝鮮半島から持ち込まれた活字・印刷技術」で、印象としては文化交流の雰囲気すら漂う。実際、高校生で勉強していた時の自分は多数の技術者・儒学者が豊臣軍によって日本に連行されたというくだりを読んでも、そこに「略奪・拉致」というニュアンスは持たなかった。というか多分、自分含め多くの日本人にとって、戦国武将の国取り話はとても興味があるものの、朝鮮出兵は豊臣秀吉晩年のひとつのエピソード程度の認識しかないのかもしれない。当時、多数の朝鮮人が捕虜として捕まり、奴隷として売り飛ばされているのだが、そんなことも知らない。倭乱があった王朝時代の歴史ドラマの存在も知らない。

国家事業として製作・管理していた貴重な金属活字は、侵入者である豊臣秀吉軍によって略奪され、さらに多数の知識人・技術者が拉致され、文物も根こそぎ持ち去られてしまった結果、安定し、高い文化レベルを誇っていた朝鮮半島の王朝や国土は退廃していった。そんなことは、何かで読んでいたかもしれないが記憶にはない。歴史認識は、やはり一致しない。

ん?思い切り話がそれた。

その時の金属活字って、日本のどこで見れるのかなあ。
今度調べてみよう。

まあありえない話かもしれないけど、
例えばそうした、日本が昔略奪した、朝鮮半島にとって重要な意味を持つ歴史的遺産を返還するなんてことも、隣国とのしこりを少しだけ解消するひとつのステップなのかもしれないな、なんて思った。

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映像の小部屋もいくつかある。
とにかく子供が多かったので、あんまり落ち着いて見ている人はいなかったけど。

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日本をテーマとした部屋もある。縄文時代から江戸時代あたりまでがカバーされていて、蒔絵の重箱や着物、浮世絵など、日本の伝統美術・工芸品もたくさん飾られており、日本人が見てもなかなか楽しめる。

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ホールを見下ろすとこんな感じ。
手前右側には、若い兵隊さんたちのツアー。

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一時期、館内が迷彩服だらけになって、ちょっとびびった。徴兵中の単なる20歳前後のお兄ちゃんたちとわかっていても・・・慣れていないとなんとなくね。

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おちびちゃんたちも博物館ツアー。
かわいかった。

以上、国立中央博物館レポートでした。興味ある方はぜひ!

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