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日本の「食」は安すぎる(山本 謙治 著)

写真以前からよく「やまけんの出張食い倒れ日記」訪れては、深夜に小腹をすかせていたので、この本が出版されたと知り、「本屋さんでチェックしてみよう」と思っていた。

直接買うきっかけになったのは編集協力された岡部さんのこの記事だ。

日本の「食」は安すぎる(【このブログがすごい!】BLOG)

その頃から、ブログ本とは「ブログというツールで才能と出会って、編集者がその才能と汗かきながら作る本であるべし」なんて思ってたんです。ブログの記事は、エッセンスのひとつであって、そこから何かを導きだして本を作るべきだと。

うん。そう思って動き出した本がようやく形になって昨日から発売になりました。

実際読んでみて、岡部さんが書かれている「一人でも多くの人に手にとっていただきたい本になりました」に同意した。

日本の「食」は安すぎる―「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない (講談社+α新書 390-1C)日本の「食」は安すぎる―「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない (講談社+α新書 390-1C)
山本 謙治


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この本は、考えさせられる。
反省させられる。
知ってるつもりで知らないことがいっぱいあるのだと知らされる。
無知は罪でもあるのだと気づく。
意識変革を迫られる。
でも、厳しい現状に暗くなるのではなく、
明日から自分の行動をちょっとずつ変えていこう、
そんなポジティブな気持ちが芽生えてくる。

そんな感じ。


「消費者にも問題がある」発言

第一章は、食品偽装の話から始まる。
昨年のミートホープの一連の事件報道で、マスコミがもっとも反応したのは、元社長の「消費者にも問題がある」発言だった。

ただ周りの人と話をしていても、マスコミの「責任転嫁だ批判」とは逆に、「いやー、それもあるよね、やっぱ」という冷静な意見が多かった。うちでも、当時父が同居していたんだけど「マスコミの前で言っちゃまずいけど、関係者全員、その気持ちは絶対もってるよね」という話をしていた。

その少し前までは、お昼のテレビでは、スーパーの「食べ物詰め放題○○○円」にむらがる人たちの姿ががんがん登場していた。「あのウィンナー、いったい何の肉なんだ!」「怖いよ」という声もあがっていた。

「安全で体にいいものを食べたい!」

そう言いながらも、実際には安さと見た目だけを追い求め、結果として日本の生産者を廃業に追い込んでゆく消費者。本当にいいものを作ろうとしている人たちにジレンマを感じさせてしまう市場原理。

食の安全について議論されるとき、私がいつも疑問に思うことがある。それは「こんな卑劣なことをして消費者を騙すなんて!」と消費者に不利益を与えた企業を責める論調ばかりで、消費者がとるべき行動について誰も触れないことだ。
もちろん「○○を買ってはいけない」というような警鐘を鳴らすような話はよく出てくるけれども、もっと建設的な方向性があってしかるべきではないか、と思うのだ。
建設的な方向性とは何か。

この本、最初から最後まで読んでいて非常に気持ちいいなと思うのは、ジャーナリストがジャーナリスティックに「日本の食が危ない!」と警鐘を鳴らし続けているだけの本ではないからだと思う。

専門家として「日本の食」を守りたいという情熱や、本当にいいものを作り提供しようと愚直に頑張っている生産者たちへの賞賛と尊敬の念がいっぱいだ。

第二章から第四章までは、食生活に身近な様々な食品について、現場がどうなっているのか、本当にいいものを作ろうとすればどのくらいの価格が適正なのか、逆に安いものはどういうコスト削減をはかっているのか、そして、厳しい現状の中、それでもいいものを作り続けたいというこだわりと理念をもって取り組んでいる生産者の挑戦について、非常に丁寧にレポートされている。

「漬物」
「豆腐」
「納豆」
「伝統野菜」
「ネギ」
「牛肉」
「豚肉」
「ハム」
「卵」
「牛乳」
「ラーメン」
「ハンバーガー」
「山菜そば」
「椎茸」
「お酢」

そんなに重たく読まなくても、「へー、ハムってこうやれば自分の家でも作れるんだ!」とか、「豚の放牧なんてのもあるんだ」とか、いろいろ新しい知識も吸収でき、読んでいておもしろい。

NHKの「プロジェクトX~挑戦者たち~」が人気あるように、やはり普段見ることのない生産の舞台裏というのは、とても興味深いものだ。


安さはシグナル

第四章に「なぜなら、安さはシグナルだからだ」という一文がある。

食品加工業界にいる友人は、コンビニやファストフードなどで食品を見るときには、必ず頭の中で原価計算をするという。そして、自分が基準値として持っている「ヤバイ線」を越えて安すぎるものは、絶対に買わないそうだ。

なかなか素人の自分たちには、原価計算とかできず、適正価格もよくわからない。ただ確かに、「ありえないほど安い」ものはあって、一瞬ためらいつつ「ま、安いからいいか」とカゴにいれてしまうことも多い。

本の中では「本来はこの価格じゃなきゃおかしい」「安すぎる」が連発されているので、人によっては「いいよな、金持ちは」的な気持ちになるかもしれない。

ただ、エンゲル係数が戦後の60%台から20%台まで落ちているのは、単に豊かになったというだけでなく、農産物輸入の自由化で(ちょうど自分が子供時代の政治トピックスだったっけ)海外の安い食が一気に流入し、食品の価格が相対的に安くなっているってのもあるんだろうなあと、この本を読みながら思った。

適正価格。
これについて、もうちょっと考え、判断できるようになりたい。


消費者の行動が日本の「食」を支える

自分の実家も田舎で、自宅&庭と同じ面積の畑があって、ネギやピーマン、スイカにとうもろこし、落花生と、かなりたくさん作っていた。鶏とチャボとアヒルがいて、新鮮な卵は本当においしかった(アヒルは自分のペットだったんだけど、オスだったので卵は産んでくれなかった)。知り合いの農家の人が、「自家用」野菜やお米をよく持ってきてくれた。葉っぱは虫食いだが、農薬散布は少なめだった。

でも10代の終りに上京して、人生の半分は既にここ。
最初の頃は、野菜の高さと、いわしすらも1尾ずつトレーに乗っけて売られているのにびっくりしたが、いつの間にかそれも慣れてしまった。

そしてあまり何も考えず、スーパーでは適当にかごにぽこぽこ食材を放り込む。

食品を手に取って30秒考える。時間が余ったら裏側を見て、その成分を知る。これだけの行動で、あなたの食品を選択するスキルは大きくアップするはずだ。

本当にそうだなあと思う。
深く反省。

あと機会があったら、
いろいろ見学会とかに参加してみようと思う。
やはり自分で積極的に情報収集して得たものでないと、自分で判断し行動する基準にはならない気がするから。

写真

2年前、オイシックスさんに声をかけていただき、マミィさんと2人、(自分の地元)香取郡の農家に見学に連れて行ってもらったことがある。

●Oisix生産農家見学ツアー~“こだわり”野菜作り(1)
●Oisix生産農家見学ツアー~“こだわり”野菜作り(2)
●Oisix生産農家見学ツアー~“こだわり”野菜作り(3)

中でも特に興味深かったのは、「産直」という道を選んだことについての話。
ちょっと極端な例なのかもしれないが、通常ルートで市場にだすのなら、かぶは丸ければいい、にんじんは赤ければいい。規格がそろってさえいれば・・・。でも、徹底的に手間をかけ、研究し、こだわりのおいしい安全な野菜作りを追求した。おいしかったか、満足してもらえたか、消費者の反応を、生産者が知ることができる生産・流通。

このときに話を伺って初めて知ったのは、こだわって作ることがどれだけ大変かということ、あと流通・販売という点で厳しい現状があり、決められた回数の農薬散布を行い、大きなジレンマを感じながら規格をそろえた野菜を作り続けている農家が多いという話だった。

そして消費者に、きちんと理解して欲しいことがあるという。 農薬を使わない有機栽培、どんなに努力しても虫が葉につくことだってある。 外側の葉に虫がついているなら、それをとって、内側の葉を食べる。 そういったことの理解・・・。

知ることで、見方が変わることってたくさんあると思う。
自分はまだ知らないことだらけだ。

先日、ろんぴさんと話をしていて、輸入物のミネラルウォーターがどれだけ環境負荷高いかという話を聞かされた。

確かに~。

そんな話もこの本の中にもちょろっとでてくる。
ミネラルウォーターに限らず、食べ物を世界中から輸入しまくっている、食糧自給率39%の日本。

いろいろ考えさせられた一冊だった。
おすすめです。


苦くて美味い一冊 - 書評 - 日本の「食」は安すぎる(404 Blog Not Found)


日本の「食」は安すぎる―「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない (講談社+α新書 390-1C)日本の「食」は安すぎる―「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない (講談社+α新書 390-1C)
山本 謙治


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▼なんとなく動画にしてみた(一個前の記事のビールを本に置き換えてみただけで、特に意味はないです)

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