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旅行写真をブログ公開したら、そこに写りこんでいた人から「肖像権の侵害だ!」そう言われたら?

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昨夜AMN主催のブロガー向け勉強会に参加してきた。
テーマは「旅先写真」と「ブログ」と「法律」。
旅先で撮った写真をブログで公開する時、法律的にどんな問題が起こる可能性があるか?何を気を付けるべきか?

講師はIT関連の事案を専門的に取り扱う弁護士の河瀬季先生。

●弁護士 河瀬季の個人サイト

実は理系出身。
コスモポリタン法律事務所に所属し弁護士として活躍しつつ、ITベンチャー代表も務めているという異色のキャリアの方だ。

法律にとんと疎いド素人の自分たちにも理解しやすい事例を大量に盛り込み、わかりやすく説明してくださった。内容は期待以上の面白さで、非常に勉強になった。

そして勉強会でのお話やその後の質疑応答タイムで強く気付かされたことがある。


●法律の基本的な知識は大事!

当たり前だが法律の基本的な知識は一般人である我々にも必要。
自分の権利をきちんと守り、誤った情報に踊らされたり他人の強気の主張に無駄に振り回されないための大事な道具になる。


●法的にダメ?世間のマナーとして問題?いや単なる私的ルール?

ただ実際には法的知識がないため、法律的にダメなのかマナー・モラルとしてダメなのかごっちゃに考えてしまっていることが多々ある。そして自分としては許容範囲かなと思われることも「それは◯◯権の侵害だ」などとと言われると法的にダメなのかと思い込んでしまったり。もっと切り分けて考える必要があるなと。


●訴えられるかどうかではなく仮に訴えられた時に認められるかどうか

あと「訴えられるリスクがある」をイコール違法行為と認識してしまったりするのが自分ら素人。「訴えられる」ことと「裁判で負けること」は別物で、実際に重要なのは訴えられることではなく、どの権利が法的に認められるのかということ。

もちろん万が一にも訴えられたら時間的精神的負担を負うことになるので、そのリスクを避けることは正しいが、訴えても原告敗訴の可能性が高い場合なら実際には裁判にはならないだろう。

「訴えられるリスク」を必要以上に大きく考えるのもどうか。
「法的措置も検討いたします」と言われないよう、対処求められた場合に速やかに対応して穏便解決を図ればいいこともある。


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なんて書くと「一体何の話?」となりそうだが、
テーマはブロガーであれば誰もがしょっちゅう気になること。

「自分以外の人の顔が写りこんだ写真をブログに勝手に掲載してもいいか?」
「旅先で撮った建物や街中風景、ブログに掲載すると後でまずいことになる?」

まずはこの図。

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旅先で撮った人物や物が写りこんでいる写真をブログで公開した場合、侵害する可能性があるかもしれない「肖像権」「著作権」などだ。

大前提として、

「写真を撮りそれを公開するのは個人の自由」

という原則がある。
ただしもしその行為が他人の権利を侵害する場合には、その限りではなくなる。

(ちなみにここで書いていることは、先生が説明してくれたのを一部メモし、それ見ながら確かこんな感じで説明していたよなという内容なので、実際の説明とは違ってしまっていることかあるかもしれませんが、それは私の記憶の問題です。どうかお許しを)

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他人の顔が入った写真を無許可でブログに公開すると、「それって肖像権の侵害になるんじゃないの?」など指摘されることがあるが、肖像権は実際には弱いもので、顔写真を公開すること自体が問題なのではなく、それによって個人のプライバシー権が侵害されることが法的には問題となる。

例えばラブホテルに入っていこうとする姿が写真に写ってしまっていて、それにより、他人には知られたくない事実が公開されてしまうことによる不利益だ。

ブロガーイベント等では、会社休んで参加している人がいたり、ブログやっていることは同僚には内緒なんてケースもある。これも本人にとっては守るべきプライバシーだ。

ただ撮った時点では、その写真に写り込んでしまっているカップルが実は不倫だったなんてわからないこともある。そして悪意なく公開してしまう可能性もあるだろう。仮にそれで訴えられたとしても、故意でなければ損害賠償まではいかないだろうとのこと。「仮に裁判で負けたとして損害賠償までいくかどうか」というのも、法的側面を検討する上で大事なことのひとつなんだなと今回初めて知った。

まあ実際には、相手からの要求に誠実に答えて写真を即削除するなり、絶対に本人特定できないように加工するなどして相手に納得してもらえばそんな面倒なことにもならないだろうけど。

ちなみに「ラブホテルに入っていく瞬間」「不倫カップル」など、明らかに当人にとって不利益になるようなプライバシー権の侵害の場合はともかく、そうでない場合はどうか。

たとえば渋谷駅スクランブル交差点を撮った写真に写りこんでいたAさん。
その場合、渋谷駅前をAさんがスーツを着て歩いていたという情報は、特にAさんにとって他人に知られて困ることではなく、プライバシー権の侵害には値しないと判断されるだろうから基本的には問題ない。

ふむふむ。

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あと著作権の話も非常に面白かった。
油絵など芸術作品を写真にとって無許可で勝手にブログで公開すれば、それは著作権の侵害になる。

一方で、著作権の対象とならないものがある。

  • 実用品
  • 大量生産品
  • 屋外に置かれているもの
  • 死後50年以上経過しているもの

じゃあ観光地のお土産屋さんの一角で売られている民芸品はどうなる?
超有名な建築家が設計した建物は?料理はシェフの著作物?

純粋美術に該当するかどうかという境界線は結構難しいものでもあり、また料理のとらえ方など国によって異なる部分もあるそう(日本では料理自体が著作物で著作権があると判断されることはないだろうとのこと)。

「ということは、お土産屋さんで写真撮影NGと言われても、そもそもお土産屋さんが著作権を持っているわけでもないし大量生産品だし問題ないのか?」

ここで新しいキーワードが登場する。

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住居権、建造物等侵入罪だ。

この住居権は、先に「弱い」レッテルを張られた肖像権とは異なり、しっかり認められている強い権利だ。

その建物なり土地を所有している人は、その内部にいる人間の行動についてかなりの程度コントロールをする権利を持っている。例えば「写真撮影禁止」を命ずるなど。写真撮影禁止の神社に、写真を撮ろうという意図で入ってくれば、その入る行為自体が建造物等侵入の罪になる。へー!

逆に言うと、外から他人の家の写真を撮り、それをブログで公開するといった行為は、法律的には問題ない(写真にそこに住んでいる人のプライバシーを侵害する情報が含まれていたらそれは別の話)。

神社境内がすべて写真撮影禁止になっていたとして、それを敷地外からズームで撮影しても法的に問題はない。もちろん、モラル・マナーの問題は別にあるので、禁止されていれば外からでも撮るのは控えるのが社会常識を備えた大人だろうけど。

などなど1時間半以上にわたり、目ウロコの内容たくさんの話をしていただいた。

部分抜粋ゆえまとまりのない内容になってしまったが、結論から言うと、法的な側面からは、実は旅先で撮った写真をブログに公開する自由が制限されることはあまりなく、よく「肖像権」という話がでるが、実際にはその権利というのは非常に弱いものとのこと。

あとは、もろもろのリスクや、モラル・マナー、人間関係など総合的に判断し、撮った写真を公開するかどうか、どう公開するかを自己判断・自己責任で決めればいいということなのだろう。

大学の授業を除くと、法律に関する話をちゃんと聞いたのはこれが初めて。
法律って面白いんだな!と改めて。

今後もこうしたブロガー向けの勉強会の開催に期待します。

河瀬先生、有意義な講義を本当にありがとうございました!
企画してくださったAMN中山さんにも感謝です。

●弁護士 河瀬季の個人サイト
●Linkトラベラーズ

同じ勉強会に参加していた方の記事です。こちらもぜひ。

●写真の権利について弁護士の方にお話を伺ったら目からウロコで脳みそ震える : 日曜アーティストの工房

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