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[夏読書] 未来創造に主体的に関わる

写真自分は凡人だ。だから過去と現在の格差で進化を語ることしかできない。

いやはや、中学生まで携帯持つようになって、しかも携帯でTVまで観る時代になるなんて、思いもしなかったよね・・・時代の流れは・・・。

でも100人中100人が「思いもしなかった」世界に自分達は暮らしているわけではない。数少ない誰かが未来社会を描き、そこに向かって前進すべく日夜努力を重ねたから「今」がある。TRONの坂村 健氏とジャーナリスト&評論家の竹村 健一氏が書いた「ユビキタス社会、始まる」を読んで、そんな思いを新たにした。

 
ユビキタスという言葉を最初に知ったのがいつだったか忘れたが、とにかく、わくわくしたことは覚えている。
そして、技術関連中心でよくわからないものの、関連ニュースは真剣に読んだ。その関心は、ホットスポットが話題になった2002年夏に、「東京ホットスポット情報館」というサイトを立ち上げる原動力ともなった。

この本では、その道の専門家のひとりである坂村氏と、その道の素人だが、だからこそより客観的に「それで、その技術は社会にどんなインパクトを与えるのか」を、読者にも理解しやすく伝えることができる竹村氏が、交互に一章ずつ同じことを別々の切り口から書いている。

だからとても読みやすい。
どちらか一者が丸々一冊を書いていたら、こうではなかっただろう。
これだけ関連情報があふれていても、どこか自分の中で「漠然」としたイメージにとどまっていた「ユビキタス社会」が少しクリアに見えてきた気がする。

同時に理解したのは、道のりの困難さだ。

ユビキタスは社会を大きく変える。
「インターネットで便利になったね」「携帯がライフスタイルを変えたね」が、“単なる前哨戦”だったと思わせる程のものかもしれない。でも、せっかくのインフラがよりスピーディーに、そしてスムーズに社会にとって真に利便性を向上させ、人の生活を豊かにするものになるために必要なのは、単なる技術開発だけではない。理想とする社会の青写真を描き、そのために必要なルール作りなど、環境整備も必要となる。想像力とリーダーシップ・・・。

ユビキタスとは全然関係ないが、「想像力の必要を示す例」としてあげられていたのは、交通アクセス新法によって新設されるようになった駅のエスカレーターのことだ。

写真

この写真は、幕張メッセに向かう途中のある風景だ。
なにか違和感を感じるだろうか?

左側には上りと下りのエスカレーターがある。右側に階段だ。
エスカレーターには多くの人の姿が見えるが、階段側には降りてくる一人の男性のみが写っている。

問題は、その手前の黄色い点字ブロックの誘導だ。
階段にのみ誘導している。
これでは、視覚障害者はエスカレータを使うことができない。

本から引用させてもらおう。

ところが目の不自由な人は、事実上エスカレーターを利用することができないというのである。点字ブロックは・・・(中略)・・・これは工事の都合でも手抜きでもない。交通アクセス新法でそう決められているのだ。視覚障害者がエスカレーターに乗ると事故の危険性が大きいということなのだろう。・・・(中略)・・・エスカレーターが下りか上りかを事前に視覚障害者に知らせるための方策も定めなければならない。面倒な話であり、基準も複雑になる。「すべてのエスカレーターに点字ブロックはつながない」とするほうがはるかに簡単だが、気がつきさえすれば、日本の行政担当者にはそれを解決する力があるはずだ。

ふむふむ。
(想像力のかけらもない自分は、つい最近まで点字ブロックが階段にしか誘導されていないことすら知らなかった)

ユビキタスは、社会の重要なインフラになってゆく。
そのインフラ整備のために必要な標準化作業などは、関連企業ががちゃがちゃやりながら進めてゆくんだろうなと単純に思っていた。でも、この本を読んで、それだけでは難しいし、そうであってはいけないんだということを知った。

IT技術は・・・
いま、本当に社会や人の生活を豊かにするために役立っていますか?

昨年みあこネットの取材に行った際にもそんな問いかけを聞き、それ以来、真剣に考えるようになった。

+++

本の最終章を担当しているのは坂村氏だ。
そこには「国民一人一人が主体的に関わる」という段落がある。
再び引用させてもらう。

国民の一人一人が、自分たちの未来を選ぶためにその内容をしっかり確認し、まず「イエス」か「ノー」かをいわなければならない。自分が求める環境を主張し、未来の選択に主体的に参加し、役所や企業のすることを監視し、同意できる方針に対しては賛同を表明し盛り立てていくべきだ。

自分は知識もないし、特に仕事で関わっている分野でもなく、どう主体的に関わっていけばいいのか全然わからないのだが、まずは少なくとも勉強をし、ニュースを読み、どういう方向に向かっているのかウォッチし、そしていつか、自分自身の主体的な判断を下せるようにしていきたいと思った。



ユビキタス社会、始まる―すべてのモノにコンピュータを
坂村 健 , 竹村 健一

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