値付けの謎が好奇心を刺激する「くらべる値段~安いと高いは何が違う?(おかべたかし/山出高士)」

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人生いろいろ悩みは尽きないものだが、それをパターン分けして整理したら、もっとも高頻度の悩みはこれじゃないだろうか。

「日々の買い物での商品選択」

「安けりゃ安いだけいい」なんて単純なものではない。
高けりゃその分きっとモノはいいのだろうが、満足度が必ずしもそれに比例するとは限らない。

結果、毎日スーパーの精肉コーナーで「100g158円の国産豚にするか、それとも108円の・・・」と首をきょろきょろさせる羽目になるのだ。

素人目には一見大きな違いがないように見える商品でも、価格は2割3割増し、時に倍以上も違うことだってある。

なぜ値段はこんなにも違うのか。
商品クオリティあるいは満足度は値段にちゃんと比例するものなのか。

そんな値付けの「舞台裏」を解き明かしてくれるのがこの本。
大人気「目でみることば」シリーズ第9弾、その中の「くらべる」シリーズとしては第3弾の本になる。


くらべる値段 - 1,404円
出版社: 東京書籍 (2017/8/8)
おかべたかし (著), 山出高士 (写真)

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「うな重」「カステラ」など食べ物が多いが、「羽毛布団」「金魚」なんてのもある。

ああ、確かに羽毛布団買う時にすごく悩んだよ。
価格ぴんきりすぎて、でも本当にそこまでの違いあるんだろうかって。

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取り上げている品目は五十音順に全部で34品。
花火に盆栽。巻き簾(まきす)にもそんな価格差があるのか。

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読み始めるや否や、没頭してしまった。

この本は内容だけでなく、この構成がすごく好き。
今回もまず見開き2ページでどどんとモノの写真が掲載されている。

「くらべる東西」「くらべる時代 昭和と平成」では、同じものだが文化・風俗や時代背景の違いで形だったり配置だったりかなり違う2枚の写真が並んでいたが、今回はその多くがメーカーあるいは販売店が同一。

なので見た目的にも非常に似ていてパッと目には違いがよくわからない。

だけど例えばこのおろし金。
左は2,400円で右は9,980円。

どこが違うんだろう。
穴の開け方か、素材か。
これだけの価格差があるということは、高いほうは大量生産品じゃないのかもしれない。

店頭でどっちを買うべきか真剣に悩んでいるお客さん視点で、じっと左右の写真を見比べる。

自分の乏しい想像力で思いつく限りの想定理由をだしたら答え合わせだ。
ゆっくりページをめくる。

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ネタバレになっちゃいけないので、文字はぼかした。

2,400円と9,980円という、4倍の価格差が生じる理由がわかりやすく解説されている左ページ。さらに9,980円のおろし金を使った時にできる「大根おろし」の違いも。

今までおろし金なんて「使いやすいかどうか」程度の選択基準しかなかったけど、突如新しい物欲に目覚めた。使ってみたいかも、9,980円のおろし金。

右側のページでは、撮影・取材に協力してもらった老舗店舗・メーカーなどの紹介とともに、こだわりやその商品を使う人へのアドバイスなども書かれている。名前は聞いたことあっても訪れたことはない店も多く、こういうのを読むと「行ってみたい店リスト」だけが肥大化してしまう。人生は有限だというのに。

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価格差が生じる理由はいろいろだ。
工場での大量生産品と熟練の職人による手間と時間をかけた製品の違いもあれば、希少性が価格に反映される場合もある。

「旬」がある海産物では、時期により、必ずしも高いほうが美味しいとは限らない。そもそも好みは人によっても異なるし、いいものを長く使うかそれとも短いサイクルで新しいものを使いまわすか、ベストな解はひとつではない。

「なぜ値段が違うのか」を追求し、取材を重ねてきた二人によるコラムも非常に読み応えあるものだ。

個人的に面白かったのは、カメラマン山出氏による「証明写真ボックスと大手デパート写真館の証明写真撮影体験」エピソード、そしておかべ氏の「エントリーモデル」考察。

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そしてメインコンテンツの中で最も驚かされたのが、これ。

巻き寿司に使われる竹製の「巻き簾(まきす)」

左は100円、右は2,500円。

25倍もの価格差が生じる理由は・・・本を読んでいただけたらと思うが、そのこだわりや手間、さらにその手間をかけたことによって使い勝手と出来上がる巻き寿司にどんな違いが生じるのかという話を読んだら、ここで紹介されている明治初期創業の江戸簾製作所、田中製簾所の製品実物を見てみたくなった。

公式サイトによると、台東区千束に工房があり、一階では実際の制作作業を見学でき、二階ショールームでも製品をいろいろ見ることができるようだ。

今の世において、ものの「値段」は、安ければ安いほど良いとされる風潮があるのではないでしょうか。しかし、本書の取材を通して、安い値段にも、高い値段にもそれぞれ意味と理由があることを改めて感じました。 安いものには努力があり、高いものには夢がある───。

このシリーズはどれも

知的好奇心を刺激してくれる。

知らなくてもなんら不便はないけど、一度知識として自分の中に取り込めば、知らなかった奥深い世界が垣間見えてくる。街歩きや旅もが楽しくなってさらなる興味が湧いてくる。マンネリな日常にちょっとワクワクできる。ページめくる都度、ひとつ、またひとつと新しい知識が積み重なってゆく満足感と達成感がある。

それに加えシリーズ最新作「くらべる値段」は、

買い物で役立つ「実践的な知識」も得られる。

価格の数字だけに振り回されオロオロ悩むのではなく、自信をもって商品を選びとれるスマートな購入者へと一歩成長できるだろう。34品目以外の商品についても、自分で「値段の違いの理由」を探る習慣を身につければ。

文字も大きく高精細な写真もふんだん。
テキストも非常に読みやすく、コンパクトに凝縮されているので、普段本を読み慣れていない人や、小さな文字ぎっしりの本だと疲れてしまう高齢者へのプレゼントにもいい。70代の両親も毎回とても楽しく読んでいる。

今回も見本誌をいただいてしまった。実はその前から発売されたらすぐ買おうと思っていた本なのでちょっとずつ大事に読もうと思っていたのだが、面白すぎてあっという間に完読してしまい、ちょっと後悔している。もっと時間かけて楽しみたかった。

そうそう。

子供の夏休みの自由研究のヒントも見つかる気がする。
そんなわけでお子さんがいらっしゃる方にもおススメ。今週中には書店に並び始めるそうなので、ぜひ見かけたらページをめくってみてほしい。

●「安い」と「高い」の違いがわかる『くらべる値段』 - おかべたかしの編集記


くらべる値段 - 1,404円
出版社: 東京書籍 (2017/8/8)
おかべたかし (著), 山出高士 (写真)

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