• 広告を利用しています/紹介製品の価格・スペックは記事作成時点のものです

渋谷ではたらく社長の告白

渋谷ではたらく社長の告白多分誰にでもあると思うが、時に「何やってるんだ・・・自分!」と、自分の不甲斐なさや、無為に過ごしてしまった貴重な時間を振り返って、激しく自己嫌悪に陥ることがある。ついでに言うと、この後どうするべきなのか、道が見えなかったりすると、蛸壺(たこつぼ)入りだ。

そんな状況がここ数ヶ月続き、さすがに昨夜は煮詰まっていた。久しぶりに「東京天然温泉 古代の湯」でも行こうと思い、ちょうどAmazonから出版日当日に届いてた本が玄関にあったので、それをカバンに入れて送迎バスに乗った。

本は、サイバーエージェント社長の藤田氏が書いた2冊目の本。

渋谷ではたらく社長の告白

藤田 晋

アメーバブックス 2005-03-31
売り上げランキング : 1

おすすめ平均
経営者の素顔
起業の経緯
行き当たりばったり

Amazonで詳しく見る by G-Tools


自分は、98年から検索エンジンの広告営業部門にいたので名前は以前からよく知っていたが、強く興味を持つようになったのは、昨年のアメーバブログ内でのブログ「渋谷ではたらく社長のblog」を読むようになってからだ。サイバーエージェントのコーポレートサイト内で綴っていた日記も有名だったが、その頃はベンチャー社長日記ならではの気合の入ったものだった印象があったので、時にお茶目な社長ブログは、藤田氏やサイバーエージェントへの印象を変えた。

過去記事:アメーバブログ(2004.09.22)

本は面白い。ブログを読んでいても、人に読ませる文章を書くのが好きな人だということがわかるが、起業家としての半生を綴っているこの本も、気張りや誇張は感じず、読み物としてぐんぐんと読み進めることができる一冊だ。成功本ちっくなものは実は苦手な自分だが、説教臭さも、読んでいて疲れるような過剰に自信に満ちた成功法則のようなものもなく、淡々と「いったいこの短い期間に、なにがあったのか」が書かれている。「社長失格」もそうだが、単に著者の体験を知るということだけでなく、インターネットビジネスの幕開けという、特別な時期に、いったい最前線ではどんな動きがあったのかを知ることができ、ネット業界の人に限らず、興味深く読めると思う。

・・・と書きつつ、やはり単に読み物として楽しむという感じではなくなってくる人も多いだろう。だんだん最初に書いた「それに引き換え、自分は一体、何やってるんだ・・・」という気持ちが強まってくる。自分も読みながら、妙に感情移入して、エキサイトしてしまった(古代の湯で長風呂した後、生ビール飲みながら読んでいたためでもあるが)。

高校の時に起業家としての夢を抱いた藤田氏は、その後、大学時代にはバイトの営業マンとして高い実績を積み、新卒で入社したインテリジェンスを1年後に退職して会社を立ち上げる時には、社長からの出資申し出をもらうほどの評価を得ている。

99年くらいからの話は、自分もその頃何をしていたか思い出しながら読めた。オフィス移転の話が書かれていた。当時の社員数からみて、あまりにも広すぎる立派なオフィスに移ったため、当時の新オフィスを訪問した担当者はすごかったよ、あれは・・・と、帰社してから驚愕のオフィスの報告を他の人間にしていた。あれは続かないよな、なんて声もあがっていた。ガラスの城だよ・・・と、他のネットベンチャーの人と飲んでいても、話のネタになっていた。

自分も、「実際のとこ、どうなんだろう」と思いつつ、総合商社や大手広告代理店出身者が転職しているという話を聞くと、そんな人に(社長より年上の場合もあった)安定した身分を捨てさせ、転職を決意させる若い経営者の器は、半端じゃあないよな・・・と思ったりもしていた。

あれ・・・何の話だったっけ。

そうそう、そんなオフィス移転の話とか、ベンチャー企業が勝ち残るために最重要課題ともなる人材リクルーティングの話とかが、それらを経営者としてどう考えていたのかを読むことができ、非常に興味深い。

「告白」という書名は、後半、ネットバブル崩壊に差し掛かったあたりに入ると、そのニュアンスがわかるようになってくる。



私の心はずたずたでした。なんとかこらえてはいたものの、
本当は涙がこぼれ落ちそうでした。
人生を賭けて、命がけでやってきたつもりでした。
たった一つの自分のプライド─会社経営─それに全く自信を失くしてしまいました。
世界中で、誰一人として味方はいない。
孤独でした。

(中略)

そんな自分の生き方が本当に正しかったのか・・・。
自分の望んでいた人生はこれだったのか・・・。
そのことすらもわからなくなっていました。
28歳の夏の終わり。
私は行き場を失っていました。

多分、「いやいや、ああいう人は元々才能があって、自分なんかとは器が違うから・・・」なんて思う人も多いだろう。それは確かに器は全く違うよな、と自分も思うけど、そういう能力とか器用さとかじゃなく、「これがやりたい」という強い思いが、ものや人を動かすし、結果としてその人の人生を充実したものにする。挫折や失敗の話、葛藤なども散りばめられた本を読みながら、そう思う。

その点については、「自分には無理だから・・・」などと、言い訳できない。
なんとなく逃げている自分をちゃんと見つめないとなと思ったりする。
(先日その点を突いてくださったKさん、ありがとうございます・・・実はずぶりと深く刺さってました)

・・・ってことで、オススメ。
ブログをまず見て、「これは面白いかも」と思ってから買うってのがいいと思う。

渋谷ではたらく社長の告白
藤田 晋

アメーバブックス 2005-03-31
売り上げランキング : 1

おすすめ平均
経営者の素顔
起業の経緯
行き当たりばったり

Amazonで詳しく見る by G-Tools


ああ・・・自分も頑張ろっと。
くさっていちゃあ、悩んでいるだけじゃあ、時間の無駄だよね。
まずは何がやりたいのか、真剣に考えてみよう。職探しはその次だな。


追記:同じくアメーバブックスの本では「イージー・ゴーイング」もオススメ(書評はこちら

追記:イージー・ゴーイング 山川健一氏の関連記事はこちら

本&音楽の記事一覧