企業の「新型インフルエンザ」対策~マニュアル作りが重要
先日、東京都が主催する新型インフルエンザ対策イベントに行ってきた。
家庭の備蓄から、プレパンデミックワクチンのこと、公共のインフラを担う部署・機関の対策、そして企業の対策など、多岐にわたるパネル展示があり、非常に勉強になった。
企業のための新型インフルエンザ対策マニュアル―事業を継続するために、いま行うべきこと
おすすめ平均
小企業、自営系の参考にはならない
パンデミック対策の担当者向けではあるのですが・・・
従業員に浸透した対策を立てる
Amazonで詳しく見る by G-Tools↑パナソニックや東電など、実際の企業の事例もあり、参考になります。企業として何を備蓄しておけばいいのか、パンデミック前と最中に使えるさまざまなチェックリストや、図式の手洗い・マスク着用方法などもあります。
特に非常に興味深かったのが、
やはり「企業の新型インフルエンザ対策」だ。
今月下旬、昔から参加してる土曜倶楽部という(まじめな)異業種交流会で新型インフルエンザ対策の現状についてとりまとめてプレゼンする予定になっているので、その準備含め、当日のパネルの内容を簡単に紹介しておきたい。
(あとでちゃんとまとめます)
パンデミック発生したら事業継続が困難になる可能性
企業の対策は、まず「想定」から開始だ。
実際にパンデミックが発生したら、どういった事態が想定されるのか?
ヒト | 40%の欠勤者 |
カネ | 資金調達や支払い等に混乱が生じる可能性 |
経営 | 労働力・原材料等の不足、資金繰り悪化等による多数の経営悪化 |
サービス業であれば、従業員以前に顧客がまったくこなくなる事態が考えられるし、また流通が麻痺してしまえば、原材料の不足だけでなく、販売も停止してしまう。
その事態になってから、混沌のさなかに決断を迫られるのではなく、
あらかじめ何段階かの状況を想定し、場面ごとにもっとも合理的な選択を事前に決めておく必要がある。
たとえば、戦力となる従業員が半分以下になった場合、
多岐にわたる事業や機能のうち、どこを生かし、そこに人や他の資源を投下してゆくか。
また社員が出社しなくても在宅勤務がある程度できるシステムの導入・体制づくりなど。
最近よく聞く、「BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)」「BCM(Business Continuity Management/事業継続管理)」というやつだ。
最優先すべきは従業員の安全確保
ただし、事業継続よりも優先すべきは、やはり人の命。
従業員の安全確保だ。
今猛威をふるっている鳥インフルエンザは強毒型のH5N1型で、
それに感染した人の致死率は6割を超えている。
●追記(2009.8.21)この記事は2009年2月に書いたもので、豚インフルエンザ(H1N1)のヒト─ヒト感染のパンデミックが起こる前のものです。現在流行している豚インフルエンザ(H1N1)起因の新型インフルエンザの致死率ははるかに低いです
新型インフルエンザ発生して国内でも感染が広がり始めた時に、無策のまま社員を出社させれば、社内を「感染の場」にしてしまい、社員の命を危険にさらす。
そのためにも厳重な対策が必要で、
必要なアイテムも早い段階で備蓄しておく必要がある。
安全な職場環境の検討 | 座席密度、レイアウト、要員動線の見直しなど安全な職場環境の検討 |
勤務体系の見直し | フレックスタイム・シフト勤務、分散勤務・在宅勤務・通勤手段の選択肢拡大など、勤務体系の見直し |
従業員教育 | 感染予防対策、クシャミ・咳エチケット、家庭備蓄、感染時の対応ガイドなど従業員教育 |
備蓄 | マスク・殺菌用手洗い液・消毒薬・ウガイ薬・手袋など必要な備蓄 |
感染者を社内に入れてしまえば、そこから一気に感染が広がる。
通用口を絞り込み、そこで入館者の体温測定、チェックリストによる体調申告など行い、クリアしなければ入館できないようにする。
そして、手洗い・消毒はもちろん、通勤時に他の感染者のウイルスを含む飛沫を浴びている可能性がある上着や靴などの消毒もそこで行う。
その「入館体制」だけ考えても、瞬時に体温が測れる体温計たくさん、消毒液、抗菌の足マット、入館警備にあたる人の防護体制など、必要なものいろいろだ。
座席密度やレイアウトも考えなくてはいけない。
インフルエンザは基本的に飛沫感染なので、パーテーションもなく机が向かい合った形の「島」レイアウトでは、感染の可能性が高くなってしまう。オフィスの入口、エレベーター内、トイレ、コピー機周辺など、人と人の距離が2メートル以内に接近する可能性が高い場所がどこか探り、密集地を作らないようにする。
マスクしてれば安全ってものではないので。
それ以前に、今はこれだけ情報ネットワークが進化している時代。
自分も今は完全に在宅で仕事をしている一人だが、企業内の多くの仕事は「体制さえ整えば家でもできなくはない」時代だ。
平時には「そうはいっても、サテライトオフィスとか在宅勤務って運用は結構難しい」なんて意見もあるだろうが、パンデミックの時にはそうもいってられない。
緊急時にはシステム・ネットワーク担当者にも欠員がでてしまう。
今のうちにBCMの観点からも、「緊急時の在宅勤務」が可能な社内システムを整備し、試験的に運用するなどしていったほうがいいようだ。
従業員教育という点では、その第一歩として
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これを全員に配布してしまうというのもひとつの方法。
(1冊210円)
航空会社に勤めている知人の話だと、すでに全社員にこれが配られているとのこと。
≪知識編≫
- 新型インフルエンザとは何か?
- そもそも鳥インフルエンザって?
- 出現が恐れられるH5N1型新型インフルエンザ
- 新型インフルエンザはいつ発生するか?
- 一度発生すれば、感染拡大を防ぐのは難しい
- 実際にパンデミックが起きたらどうなるか?
≪対策編≫
- 国、自治体、企業、家庭・個人の協力で危機を乗り切る!
- 流行スピードを遅らせて社会機能を守る!
- 「予防対策」の決め手はワクチンのちびくと接種計画
- 新型インフルエンザの「治療」はタミフルの早期服用がポイント
- 新型インフルエンザ発生前 今からできる対策
- 新型インフルエンザがついに発生!発生後の対策
- 毎日の体調チェックと自宅での看病の仕方
- 新型インフルエンザ なんでもQ&A
まさに「知識のワクチン」だ。
もちろん、これは決して企業用の手引きではなく、内容もごく基本的なことだけなので、社内では詳細なマニュアルが必要になる。
これは消毒法に関するパネル。
場合によっては、それこそマニュアルに沿っての「予行練習」も必要になるだろう。
パネルを読んでいると、実に多くの対策が必要なことがわかる。
ウイルス除去のためオフィス内の清掃・消毒は平時よりも徹底しなくてはいけないのだが、委託業者側も人員不足になり、サービスが止まってしまう可能性は高い。その際にどうするか。いろんな想定が必要だ。
まずは「シナリオ想定」から
備蓄やマニュアルは、「何が必要なのか」と個々に考えていっても、必ず漏れがでてしまう。
最初にも書いたけど、やはり「シナリオ想定」が重要なのかなと。
もし今のままパンデミックが起こったらどうなるのか。
維持する事業・機能の選択といった話から、社内エレベーターの物理的封鎖まで、いろいろなシナリオを想定して、その対策をしっかり練る。
・・・ための作業を行う部署なり人員を指名するって段階の企業も多いようなんだけどね。
とりあえずメモとして。