復興支援ボランティア体験@石巻(14)雄勝町の被災風景
今回一連のレポートでは、あくまで「ボランティア体験」を中心とし、被災地写真はなるべく控えようと思っていた。
3月11日以降、被災地から離れた場所の私たちもが、メディアやネットを通して悲惨すぎる写真・動画を大量に見続け、心に重たいしこりを作ってしまっている。
私自身も、現地で撮影した被災地風景を見るだけで、全身にどっと重力がかかる。
ただ雄勝町の写真は何枚か掲載しておこうと思う。
雄勝町へは、週3回の炊き出しが行われていた。
被災者向けではなく、現地に残って作業をしている行政の人が対象という、少し変わった炊き出しだった。
雄勝町は、石巻市の中心から北東方向に車で4~50分。南三陸町との間あたりにある。
切り込んだ湾、海からいきなり山となる入り組んだリアス式海岸が特徴だ。
多くの場所では、広範な被害があっても、建物すべてが押し流されているエリアは比較的限られているが、雄勝町は「ひとつの町が丸ごとなくなった」ような状況になってしまった。
「昨日まで町があったんですが、津波の影響でほぼがれきの中に2~3大きな建物だけがある状況に・・・」
私たちの炊き出し目的地は、クリーンセンター(清掃工場)で、市や県の行政の人が寝泊まりして作業にあたっていた。
途中の道はまだ河原に鉄板を敷きつめた状態のところも多く、川面すれすれで、雨量が多い日にはちょっとどきどき(上の写真は帰路撮影したもの)。
一般車両は通っておらず、自衛隊や警察車両や工事車両などだけがいきかっていた。私たちのバンも、一度警察に止められ職質を受けた(被災地での盗難が発生しているため、県外ナンバーの車を取り締まっている)
川の両側は、大きな一部の建物を除き、家屋はまったく形を残していなかった。船も多数横たわっていた。長い間、北上川沿いのそうした痛ましい風景を見続けた後、右折して山の斜面をあがってゆく。
「津波被害にあわなかった安全な場所にそのクリーンセンターがあるんだな」
と私は思った。というのも、川からも海からも離れ、緩やかな登り道をずっとあがっていったので。ただそれは誤解だった。
登りきって視界開けた場所には、四方を山に囲まれた割と大きな集落があった。
まるで「爆心地」だった。
こんな高い場所まで上がってきた水が、これほどの破壊力をもつと誰が想像しただろう。押し倒され、捻じ曲げられ、粉々にされた建築物は、見ているだけで鳥肌がたつ。
人は・・・どうなったのだろう。
山間のこんな場所での津波警報、家が根こそぎ流される事態になるなど、想像できなくても当然な気がする。
逃げ遅れた人は、どんなに恐怖だったろう。
車や建物の残骸が大量に蓄積していたが、これらはこのエリアのものだけでなく、川の両岸や海沿いエリアから押し流されてきたものもあるのだろう。
自宅があった場所で、アルバムなど思い出の品物を探し歩く被災者たちの姿をテレビで見たが、きっと遠く離れた山の中の、こんな場所まで流されてきているものもあるはず。
がれきとして処分されてしまう前に、かけがいのない思い出を発掘・復旧させる、そんなボランティア活動を行っている人達もきっといるだろうなと思った。港町の被災者の人達がここまで探しにくるのは難しいだろうから。
工事車両などは走っていたものの、車を降りて少し歩いても、他の人と会うことは全くなかった。一部、クリーンセンターに避難しているようだが、多くの町民は、別の場所の避難所にいるとのこと。
こんな風景を見たら、安易に「頑張ってください」なんて言えない。考えれば考えるほど、たった一週間滞在しているだけの部外者の自分ですら鬱になってくる。
道路に面したところに、家の土台が残っていた。
ここが玄関だったのかな。その脇はトイレかな。
土台に打ちつけられた木はまだ新しく、大工さんが書き込んだらしい文字もはっきり読み取れた。建ててからまだそれほど経っていない。若い家族が住んでいた家だったのかもしれない。
・・・みな、無事だったろうか。
ここからさらに少しあがったところに、クリーンセンターはあった。市や県の職員が、奥の建物や、車の中で寝泊まりして、復旧活動に従事している。炊き出しはこのガレージの一角で行われ、夕食を提供していた。
5月上旬でも、夕方過ぎると一気に冷え込んでくる。
薪で暖をとりながら、持っていった八宝菜とご飯を中華丼のようにして食べてくれた。
大震災直後は、雪も降り、物資も不足していて、本当にしんどかったそう。
「それ考えれば、今は天国だよね~」
こんな過酷な環境で何週間も寝泊まり作業をしているというのに、笑いながら言っていた。
関東に戻ってきて4日が経つが、今でも雄勝の風景を思い出すと、普通にここで、いつもと変わらぬ日常生活を送っている自分自身が何かもどかしく思えたりする。考えても何もできないとわかってはいるのだが、日常と非日常の間の距離を、どうしても消化できずにいる。
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