東海汽船「2代目さるびあ丸」神津島航路ラストクルーズ(島旅編)
今回は、さるびあ丸の神津島航路ラストクルーズを見届けることが目的なので、島には上陸せず神津島まで行って折り返してくるプラン。離島で新型コロナウイルス感染拡大する事態を万が一にも生じさせては申し訳ないので、島民がさるびあ丸を見送るために集まる桟橋にも下りないことにした。
なので「島旅」ではなく「船旅」。
伊豆七島航路は、実は島に降りなくても十分に楽しいことを去年一度体験している。
●七夕限定!東海汽船「プラネタリウムアイランドクルーズ」に参加し神津島まで日帰り往復
今回はさらに、さるびあ丸ラストクルーズで各島で開催されるお別れのレセプションも見ることができ、サプライズで「三代目さるびあ丸」の並走も間近でウォッチすることができる。
▼2代目さるびあ丸、神津島航路ラストクルーズ(6分10秒)
今回主要シーンはすべて動画で撮影したのでぜひYouTube動画を見ていただけたらと思うが、写真もたくさん撮ったので貼り付けていきたい。
船に乗る前の連絡通路入り口で、まずは検温。
ひとりずつ、非接触型の体温計で測られる。
驚くほど大柄の外国人男性が検温担当だったので妙に緊迫感のある一角になっていた。
去年の七夕ツアー&東京湾納涼船以来のさるびあ丸。
最近は、バイクの沿岸ツーリングでフェリーに乗る機会が増えているが、九州に向かう東九フェリーも、大洗から北海道に行く商船三井フェリーの船も、世代交代で新しい船になっているところがほとんど。
なので1992年就航で28年選手のさるびあ丸は、逆に数少ない「昔ながらの船」感が漂い、新鮮だ。
自腹の時はいつも安い二等だが、今回ご招待ということで初めて利用した特1等。二段ベッドが2台あり、奥にはソファやテレビも。
なお、船内施設の写真も大量に撮ったので、そちらはまた別記事にしたい。
今回は、日本旅のペンクラブ理事でライターの板倉さんと同じくライターの熊山さんも乗船。
東京アラートで真っ赤に染まったレインボーブリッジを背景にアバター(?)ミニ熊写真を撮る熊山さん。
夜は一等船室で、東海汽船の方々と島・船関連のジャーナリストやフォトグラファー、ライターの方々と、さるびあ丸の話などで盛り上がった。
そして翌朝。
4時半に起きてAデッキにあがるも、残念ながら雲が分厚く、海に上がる日の出を拝むことはかなわなかった。
前夜はバタバタしていて船内をちゃんと見ることもできなかったが、ここに立つと毎年参加していた東京湾納涼船の熱気に満ちた夜が思い出される。
この写真手前の通路の右側には、飲み放題のビールコーナーがあり、その手前にはおつまみの販売コーナーが。ステージはもちろんゆかたダンサーズ。
東京湾納涼船は、今年は残念ながら中止で、来年以降も会場は新しい三代目さるびあ丸だ。
毎年何度も参加していて、目をつぶってもどこに何があるか覚えている現・さるびあ丸で東京湾納涼船が開催されることはもうない。すごく切ない気持ちになった。
二度寝した後、利島を眺めながらの朝食。
富士山のように左右対称の美しいフォルムの利島にはまだ上陸したことがない。
新しいさるびあ丸での島旅第一弾はここにしようか。
もちろん新型コロナウイルスの脅威がなくなってからの話だけど。
船旅の面白さは、海から島をじっくりと眺められることだ。
見る角度によって島の姿はがらり変わる。
伊豆七島のこの航路が「船旅」するのに最適な理由はたくさんある。
- 竹芝22時発なので金曜日仕事帰りに乗れる
- スカイツリー&東京タワー、お台場、レインボーブリッジ、羽田空港と東京湾の夜景が見事
- そんな夜景を見ながらお酒を飲むのが最高に楽しい
- 東京湾を出た後も、特徴ある形の島が次々現れ、最後まで飽きることがない
- 往復して東京に戻ってくると19時で帰宅にもちょうどいい時間
今はまだ、新型コロナウイルスの収束前で伊豆七島の島々へ観光で訪れるのは控えるべきだが、島で降りず純粋に船の旅を楽しむというのはありだと思う。
ちなみに東京・竹芝桟橋から神津島までの往復は、2等船室で10,900円。
さらに6月25日以降なら、新さるびあ丸就航記念で、ぽっきり1万円で1等室神津島往復できてしまう。安すぎ!!!
●新さるびあ丸就航記念! 「島島(しましま)きっぷ」(6/25~29、7/3~12)|東海汽船
ビールやワインなど持ち込んで、デッキで海風を浴びながらのんびり海上バケーションなんていうのも優雅な週末じゃないだろうか。
実際今回も、下船せずただ最後のさるびあ丸に乗るためにやってきたと思われる人たちが大半だった。自分もその一人だ。
本格的なカメラ・ビデオカメラを構えた乗客も多かった。
実は少し前、ラストクルーズに三代目さるびあ丸が顔をだすという情報も公開されていた。
下関のドックをでて、東京に向かって航行する生まれたてほやほやの新・さるびあ丸。写真以外で見たことある人は、ドック周辺にお住いの人たちや関係者などごくごく限られている。伊豆諸島海域で誰より早くその写真を撮りたいという人もきっと乗っていたのだと思う。
●REPORT一覧|東海汽船 新造船 2020夏 就航|東海汽船
それにしても島は、見ているだけで飽きない。
サンゴ礁の隆起などでできた沖縄離島の島々と違い、伊豆諸島の島々は火山活動によって誕生している。なので島周囲は切り立った崖が多くを占め、非常に荒々しい。平地も少ないので、島の外周は船からしか見えないところも多い。
・・・とその時。
「わださん、まもなく神津島沖。もう見えますよ」
東海汽船の方にそう声をかけられた。
慌てて外にでると・・・
おおお!!!
東海汽船のTwitterやFacebook公式アカウントで建造途中の写真をずっと見ていた三代目さるびあ丸。それが生で、目の前に浮かんでいた。
自分でもびっくりするくらい感動してしまった。
新しいさるびあ丸だよ!!!
遂に対面できたよ!
そして神津島。
ここに前回来たのも東海汽船のツアーだった。
●大型バイクも多数上陸!東海汽船主催「神津島バイクツアー」に参加(前編)
●大型バイクも多数上陸!東海汽船主催「神津島バイクツアー」に参加(後編)
二代目さるびあ丸が神津島を訪れるのは今日が最後。
子供から高齢者まで、島の方々が見送りにきていた。
手に持っているのは「さるびあ丸、28年間ありがとう」と書かれた手ぬぐいだ。さるびあ丸を愛する神津島の島民の方が作ったオリジナル手ぬぐいで、下記サイトで販売されている(記事公開時、東海汽船が桟橋で配布していたと誤記しておりました。申し訳ありません)
●さるびあ丸 ありがとう手ぬぐい【東海汽船許可済】 | 神津にいくばぁ
レセプションの後、紙テープでのお見送り。
「ありがとう」の声がひびき、笑顔なんだけど切なく名残惜しそうな表情にもなりながら手を振る人達に、思わずうるっときてしまった。
桟橋に降りた人によると、涙を浮かべている人もいてもらい涙してしまったのだとか。
神津島からは、三代目さるびあ丸が並走してくれることに。
二代目・三代目さるびあ丸が一緒に長い距離を走るのはこの日一日限りだ。
私たちには聞こえない声で会話をしているんじゃないか。
そんな気持ちにすらなった。
写真ではさんざん見ていたが、海上を滑るように走るその姿は本当に美しい。
さるびあ丸にのってさるびあ丸を見る。
貴重な経験だ。
こんなに長時間、航行する船を見続けるという経験も、今までなかったしこの後もないだろう。普通はすれ違う時に、遠目にちょっとの時間見るくらいなので。
皆、写真を撮りまくっていた。
そして式根島。
子供たちの太鼓が響き渡る中の着岸。そしてやはりここでもセレモニーが行われ、目頭が熱くなりそうな別れがあった。
式根島もまた来たい。
温泉に入りたい。
三代目さるびあ丸は着岸はせず沖合に停泊して、二代目さるびあ丸が島との別れを済ませまた戻ってくるのを待っている。
そして新島。
ここでも多くの島の人たちの見送りが行われた。
島でのセレモニーや見送りシーンは動画で撮影しているので、よかったら見てほしい。
▼2代目さるびあ丸、神津島航路ラストクルーズ(6分10秒)
島の人たちにとって、長らくお世話になったさるびあ丸を最後に一目見るのと同時に、新しい三代目さるびあ丸との初対面の機会でもある。「早く乗ってみたいね」「中はどんななんだろう」沖合に停泊する新造船を見ながら、そんな話でも盛り上がったのではないだろうか。
私も早く乗りたい♪
利島の細長い桟橋。
ここは他の島と異なり、桟橋に入れる人をかなり制限したのかも。
桟橋の入り口あたり集まっていた人たち、着岸したら入ってくるのかなと思ったけどそうではなく、ずっとそこからさるびあ丸を見ていた。
高齢者が多く医療体制が乏しい離島にとって、新型コロナウイルス感染拡大はまさにバイタルな事態となる。東海汽船の公式アカウントでも、決して密にならないよう、丘の上など船が見れる場所から見送ってほしいと呼びかけていた。
船から各島にプレゼントされたのは、船内で長らく使われてきた島名プレート。
役場や観光協会などに三代目さるびあ丸の写真と一緒に飾られるのかもしれない。
利島から船長には、小中学校の児童生徒会で作った、メッセージが書き込まれたさるびあ丸の絵が贈られた。
どのくらいの生徒数なんだろうと思って調べたら、利島村立利島小学校の令和元年の児童数は21人。1年生・2年生は2人、6年生は1人。学級数5クラスということなので、どこかの2学年は1クラスしかないのだろう。中学校は15人だ。
最後の寄港地、伊豆大島・元町港。
先に三代目がもう着岸していた。
島の人たちもたくさん集まっている。
間近で見る三代目さるびあ丸。
桟橋の横の三代目さるびあ丸は、洋上で見ていた時よりずっと大きく感じられた。
そしてポップで楽し気で和柄のようでもある波の幾何学文様は、一目見たら忘れられない。藍色「TOKYOアイランドブルー」も美しい。
「オツカレサマ」と書かれた文字、よく見るとフィンで構成されていた。
自分の近くだけあまり人がおらず、結果「これ自分が全部投げなくちゃだめだろうな」と、撮影の手を止めてひたすら紙テープを投げ続けた。たぶん人生でもっとも紙テープを投げた日だと思う。
結果、色とりどりの紙テープがまるで網のように広がった。
2隻のさるびあ丸に挟まれた広い桟橋で、最後のお別れセレモニー。
テレビ局も多数きており、その日の夕方にはNHKで流れた。
ここまで桟橋に下りるのも自粛してきたが、2隻のさるびあ丸が両側に着岸する桟橋風景にどうしても我慢できなくなり、セレモニーが終わり密集度が下がったタイミングで船から一瞬だけでて、写真撮影した。
リコーの360度カメラ「THETA S」でも撮影したのがこれだ。
神津島航路ラストクルーズの2代目さるびあ丸と、新造船3代目さるびあ丸が停泊する伊豆大島・元町港の桟橋。 - Spherical Image - RICOH THETA
ここで三代目さるびあ丸ともお別れ。
船首には虹がかかっていた。
東京湾に入り、夕暮れ時のレインボーブリッジ。
雷雨の中ここを出発したのはわずか20時間前なんだけど、まるで何日もかけて旅して戻ってきたような不思議な気分。
船旅ならではの感覚なのかもしれない。
楽しかったし、名残惜しかったし、島々での別れのシーンは胸があつくなるものだった。
二代目さるびあ丸がこの後、どの国でセカンドライフを送ることになるのかは教えてもらえなかったが、新しい場所でも元気でいてほしい。
ありがとう、さるびあ丸。
きっと、忘れない。
ちなみに二代目さるびあ丸は、今日6月8日からドック入りで運休となる橘丸に変わって、三宅・八丈島航路に移動する。日本でのラストクルーズは6月25日だ。
それまでなら八丈島で折り返して帰ってくる船旅も楽しめる。
もちろん観光客も問題なく上陸してくださいという段階になれば、ルール守った上で島旅も満喫したいところ。
若い頃に伊豆七島に行ったことがあるという人も、私世代以上だと結構多いのではないだろうか。二代目さるびあ丸で懐かしい思い出に浸りながらの船旅をするなら今月がラストチャンスだ。観光自粛の今なら、天気予報を見ながら直前にチケットを予約・購入することもできる。お時間ある方いれば是非。
▼2代目さるびあ丸、神津島航路ラストクルーズ(6分10秒)