知床羅臼体験&知床岬クリーン作戦(7)知床岬に遂に上陸!絶景&ゴミ堆積の現実そしてビーチクリーン活動(後編)

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上陸したのは知床半島先端よりややウトロよりにある文吉湾。
羅臼漁港が定置網の基地などとして使っているところだそうで、入り江には大きな漁船も停泊しており、海岸には漁具が並べられていた。

そして歩き出してわずか2分。
前日のフォーラムでも語られていた、海ゴミ問題の現状と対面する。

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桟橋など施設があるすぐ横の弧を描いたエリアは、隙間ないくらい漂着物で埋まっていた。流木はいずれ自然にかえるものなので回収優先順位は低いが、今も漁業で利用されている港の隣接区域ということもあり、ロープをはじめとする漁具のゴミが多かった。

必ずしも故意に捨てられたものばかりではない。自然災害などによってやむなく流されてしまったもののほうが多いだろう。過酷な環境下での利用が前提となっている漁具は他の一般ごみと比べても耐久性が高く、長きにわたってゴミとして残る。簡単には切れないロープは、海鳥に巻き付いて自由を束縛し、命を危険にさらす。

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これはクマのふん。
知床半島はクマが頻繁に出没するエリアだ。先頭を行くNPO法人しれとこラ・ウシ代表理事の湊氏がクマの生態についても熟知しているので問題はないが、そうでなかったら気軽には歩けないエリアだ。

湊氏はフンを見つけると、どのくらい経過したものかや、成獣か小熊かなどの差を見ているようだった。

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どうしても海沿いの岩場をまわれない波の高い場所があると、高台を通る。
あひるの水かきのような入り江が多数。

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上から見た範囲では材木が中心だが、間に浮きなどプラスチックゴミも点在している。

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青いものはロープだろうか。
プラスチックゴミもかなり多く混じっているようだ。

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降りてゆく。

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その途中の草むらにも、ビニール袋やペットボトルなどが点在している。
風で舞い上がってしまう軽いものは、海岸だけでなく急な斜面にも運ばれてくる。

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海岸が近付いてくると、青いものの正体もわかった。

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ブルーシートのようなものだ。
それが千切れ、漂流昆布やわかめのように海岸の石ころに張りついている。

前日のフォーラムで語られていた、ビニールなど劣化しやすいものがどんどん細かくなり、最後は回収不能なほどに細分化して海をずっと漂うことになるという、プラスチックごみの細分化の話を思い出した。

他にはやはり漁具であろうロープが多数。
台風などで養殖の網が流されてしまったりして発生することも多いそう。ただ回収しなければこうしてどんどん溜っていってしまう。

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劣化してぼろぼろになったビニール袋を手に、記者の方の質問に応じる酒井氏。長年ここの清掃に携わっている。

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海岸の岩場は黒々とした色で、垂直に切り立ったものが多い。
知床半島は、羅臼岳、知床岳、硫黄山といくつもの火山で構成されている。私は地質学の知識ゼロなので詳しくはわからないが、こうした奇岩ともいえる岩場が多数にょきにょきと生えているのは、やはり溶岩地形ゆえなのだろうか。

岩と岩の間の切れ目を越えてゆくのだが、辿り着いてみて驚いた。

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大きな岩が組み合わさった切れ目には・・・

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まるで誰かが干しにきて並べたかのようにロープや千切れて細くなったビニールシートが引っかかっていた。しかも大量に。
高波がここを越えた時に、海岸線に横たわっていた漂着ゴミを移動させたのだろうか。

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そこからはしばし、海沿いの岩場をじゃぶじゃぶ行進だ。

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岩の間にオレンジ色の球体が見える。
船のフェンダーか、あるいは養殖施設の浮きなどだろう。

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膝まである長靴のおかげで、海の中を歩いてもまったく濡れる心配はなかったものの、海中もごつごつした岩場だったり、まるで洗濯板のように斜めの歯状態になった溝が並んでいる場所もあり、歩くのは少々大変。

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さらにスポーツシューズなら全く問題ない岩場も、ゴム長靴で歩くと結構しんどい。
自分はジャストサイズのゴム長靴でなかったこともあり、分厚い登山用の靴下を履いていたにもかかわらず、あっという間に踵が赤むけてしまった。

長靴はすべて羅臼の宿まるみでレンタルしてもらったものだが、24センチ以上だったので、それ以下のサイズの人でもし作業用の長くて丈夫な長靴を持っているなら持参したほうがいいかもしれない。レンタルする場合も、靴下はなるべく厚手のものがいい。

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20年間このエリアのゴミ清掃をしてきた湊氏。
道中、過去の経緯なども含め、どういったゴミが漂着するのかなど話してくれる。

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可憐なサクラソウ。

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そして再び、波が高すぎて越えられない岩場があったので高台に。

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海岸線の多岐に富む地形は、見飽きることがない。

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そして辿り着いたのが、小さな桟橋らしきものがある入り江。
ここに再び船をつけられるようになればいいのだが・・・的な話を何人かの方がされていた。

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流木の合間に多数のゴミ。
私にはどれが何なのかよくわかっていなかったが、ビーチクリーン活動を長年続けているJEAN事務局の小島氏は、何に使うものなのかだけでなく、その形の特徴などから、「韓国のカキ養殖で使われるもの」など、国まで特定していた。

公式サイトには、その一部が紹介されている。

●ごみ辞典 | 海ごみの問題点 | 一般社団法人 JEAN

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オオワシ岩。

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海岸には、非常に鮮度のいいクマのフンがあった。
まだ時間が経っておらず、小熊だろうとのこと。

気温やエサの状況などによって、クマの生育や親離れの時期なども変わってくるそう。

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立派な角を持つ鹿の頭部も(拡大写真

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岩場に打ち上げられた水だこ。
今夜のおつまみに・・・なんてことはなく、もっと海水があるところまで抱き上げて運んだ。かなりの重量があったが、水に入るとあっという間に泳ぎさっていった。

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昔、番屋があった建物の跡も。
湊氏は子供の頃このあたりまできて昆布を拾ったりしていたそうだ。

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海沿いの岩場に、明らかに人工的に囲いを作った場所があった。
湧き出す真水のプールとして使っていたところだそうで、少し海水混じっているものの、今も水が湧き出ていた。

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そして海沿いの斜面を登り・・・

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知床岬に立つ、白と黒のツートンカラーとなっている知床岬灯台が見える地点が今回のゴール。この灯台は「日本の灯台50選」にも選ばれている。

●知床岬灯台 - Wikipedia

もうひとつ、今回初めて知ったのだが、知床半島はウトロ側と羅臼側で行政管轄が異なる。ウトロ側は北見支所、羅臼側は根室支所。今回はその両方にまたがる活動だったため、国の機関に届け出や許可申請をだすにはその両方に行かなくてはいけなかったそう。中央に高い山岳地帯が走る知床半島は、北側と南側で生活圏としても完全に分かれているのだなと理解した。

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往路では荷物が重くなってしまうためゴミは拾わず、主に入り江ごとのゴミ堆積の現状を調査し、またメディア関係者やブロガーなどは写真を撮って記録することに注力したが、復路はゴミを拾いながらだ。

ただしここからまた、岩場を上り下りして船までの長距離を歩く必要があるため、「細かくなってしまう危険性の高いプラスチックゴミ」を優先して拾うことに。浮き球もたくさん転がっていたが、背負えなくなってしまうのでそれは見送り。

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さびまくった船外機も漂着していた。
小型船舶のものと思われるが、船ごと流されてしまったものなのだろうか。

緊急度でいうとやはり、鉄よりプラスチックのほうが高いとのことなのでこれも今回は回収せず。

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番屋跡地。

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ここだけは人が生活していた痕跡が残っており、大量のガラス瓶。しかもよく見るとファンタと書かれている。いつのものなのだろう。建物がまったく残っていないので、人が住まなくなってから相当経過していると思うのだが、瓶は意外にもきれいだった。

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礼文島などにも咲いているミヤマオダマキ。
内側の花弁は濃い紫と白の二色で、ランプのようにうつむいた可憐な花を咲かせていた。

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黙々とゴミを拾う一行。

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しかし人数もさほどおらず、ほとんどの入り江は手付かずのままだ。
今年全部で10回のビーチクリーンが開催されるそうなので、それによってどこまで回収できるのか。

JEANの小島氏によると、九州・沖縄の離島などの排出源近くの海岸と違い、撤去してもすぐにまた溜ってしまうということはないだろうという。ただ船でしか辿り着けないためビーチクリーンのハードルが高く、長時間かけて溜ってしまっているものとのこと。なので一度撤去すれば、すぐまた元に戻ってしまうことはないという。

今回いろいろ聞いた中で、これは救いになるお話だった。

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復路も海沿い通行が無理な場所だけ高台を一列になって歩く。

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文吉湾が見えてきた。
思いのほか、帰りは早かった気がする。

最初は知床岬の風景に目を奪われ、あっち見ては驚嘆しこっち見ては感動しで忙しかったというのもあるのだろう。

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そして気付いたのだが、私はかなり体力を温存しすぎた。

しんがりを務めていた船長さんに「前半で頑張りすぎると先が長い。岩場でばてちゃって結局誰かに荷物運ばせることになる。無理するな」と言われたため、万が一にもぎっくり腰を発症させて他のメンバーの重荷になってはいけないと慎重になってしまった(以前、東日本大震災ボラの海岸清掃に参加しぎっくり腰したトラウマあり)。

そんなわけで、最後この文吉湾で漁具ゴミ中心に拾いまくり、自分のビニール袋を満杯にした。

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ザ・達成感!

今回は第一回で取材陣が大半のツアーだったため現状調査のほうに重き置かれたが、次に参加する機会があったら、入り江いくつかコンプリートしたい。きっと爽快だろう。

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船にゴミを積んで・・・

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再びシャチを眺めての帰途。
貴重な遭遇機会が多すぎて、だんだん慣れていってしまっている自分が怖い(笑)

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そして羅臼の港でゴミの分別作業。

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主に韓国だが、海外からの漂流物も多かった。
韓国からいったいどうやってここに?と思ったが、日本海側を本州にそって北上する対馬海流に乗り、それが津軽海峡を通る津軽暖流に乗って太平洋側に抜け、ここ知床半島までこうした漂流物を運んでくるのだという。

良きにつけ悪きにつけ、
潮流とは本当にすごい運搬力を持っている!

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最後に軽量。

結果は・・・

プラスチック48.5kg
空き缶1.5kg
漁網52.2kg
合計102.2kg

全体量からしたらあまりに僅かではあるが、それでも100キロ強。
正直、海岸清掃には「やってもやってもキリがない」という諦めイメージがあったのだが、今回JEANの小島氏のお話を伺い、例えそうでも諦めたら終わりなんだと気付かされた。

アメリカで、洗顔料のスクラブなどマイクロビーズ混入を法規制する動きが起こったのも、海洋汚染問題への関心を持つ人が一定数以上いたからだろう。その最初のきっかけとしてビーチクリーン活動もきっと大きな役割を果たしていたはずだ。

毎日新たに発生する海ゴミの量を考えたら、ビーチクリーンで回収されるプラスチックゴミの量は少ないかもしれない。それでも蓄積を減らすことはできるし、イルカやくじら、カモメなどの命を救い、生態系を守る一助にはきっとなっている。

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「海岸清掃してきれいになっても、またすぐゴミだらけになる」
「そんな中どうモチベーションを維持すればいいのか」

これは前日のフォーラムで、自分が小島氏に質問した内容だ。

小島氏はうなづきながら答えてくれた。
自分達も毎回そのもどかしさを抱えながら活動に参加しているのだと。でもこの活動に携わっていなければ知らなかったこともたくさんあり、出会わなかった人たちもたくさんいる。続けてきてよかったと思っていると。

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最後、再び公民館に集まり、意見交換会および反省会。
私たち初参加組は、参加した感想を述べた。

自分もこれきりで終わらせず、具体的にどんな行動ができるのか考えていきたい。
とりあえず今思いつくのは、神栖市で毎年7月に行われる海開き前のビーチクリーン、そして昨年誘ってもらいながら行きそびれていた、バイク乗りの人たちによる富津岬の海岸清掃活動。日時さえ都合つけば参加したいと思う。

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そして知床岬クリーン作戦に興味を持った人は、ここを見てほしい。

●NPO法人しれとこラ・ウシの活動内容~知床岬クリーン作戦(2016)
●まるみからのお知らせ

今年は計10回開催される。
船をチャーターしガソリン代もかかるので、ひとり15,000円の参加料が必要となるが、通常の観光では訪れる事ができない知床半島先端部に上陸し、その壮大な自然に触れることもできる。湊氏のガイドによってきっと知床半島の自然についても多くを学べるだろう。羅臼の宿まるみ宿泊もおススメだ。

実際に開催されるかどうかは参加人数にもよるそうなので、参加してみたい方は電話で問い合わせてほしい。

きっと貴重な経験になると思う。

[旅]知床羅臼2016年5月

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