WADA-blog(わだぶろぐ)

トップページ旅の記録&記憶

知床羅臼体験&知床岬クリーン作戦(6)知床海ごみフォーラム

今回、知床半島・羅臼にやってきたのは、5月29日に開催される「知床岬クリーン作戦」に参加し、ブロガーとして取材するため。それに先立ち前日5月28日、「知床海ごみフォーラム」が開催された。

「美しい海をこどもたちへ」を掲げ、海ゴミ問題に取り組む一般社団法人JEAN事務局代表の小島氏もパネラーとして登壇し、個人的に非常に勉強になる2時間だった。

会場は羅臼町公民館。

「魚の城下町らうす」のシンボルマークステッカーが入口に貼られていた。
よくカタカナやひらがな一文字でシンボルマークとしている市町村はあるが、ひらがな三文字をこんな風に組み合わせて魚にするのはかわいい。「ら」の凹みが魚の口に、「う」の上の部分が背びれに、そしてひらがなならではの曲線で魚のボディを滑らかに描写しているところが見事だ。

どうも話を聞くと割と直前で開催が決まったようなことだったが、新聞社の記者の方なども来ていた。司会を務めるのが、今回お声がけくださった旅ライターでもある一般社団法人プレスマンユニオン理事の板倉氏。

まずは羅臼町長からの挨拶。

羅臼町としてもこれまで様々な取り組みを行ってきており、今後も検証してゆく。知床半島が世界遺産になって丸10年が経過した。街として、次世代を担う子供たちに、北方知床に住む幸福感をどう感じてもらうかということを考えていかないといけない。ゴミ問題は大変な問題で、漁業者として犯してしまっている罪もあり、また世界中から流れ着いてしまう現状もあり、今回の活動はそれらをしっかり考えるいい機会。世界に誇る知床を守るため、住民も一緒になって考えていけたら。とのこと。

メインはJEAN小島氏のプレゼンテーションだ。

海のごみとはそもそも何なのか。
どうして海に漂流し、海岸に溜るのか。

地産地消という言葉があるが、海ゴミはその対極にあり、あるところから流出したゴミが遠く離れた海岸を汚す。海岸だけの問題ではなく、海から離れた市街地から出たゴミも川を伝って海に放出されてゆく。

とりわけ現在の海ごみ最大の課題は「プラスチック」だという。
海ゴミというと具体性に欠けるため、「プラスチックによる海洋汚染」と対象も特定したほうがいいほど。

プラスチックごみの最大の課題は「分解しにくいこと」。
そのため、一度海に流出したごみは、誰かが清掃しない限りずっと残ってしまい、そして蓄積をしてゆく。そして環境生態系に甚大な被害をもたらす。

プラスチック製品の半分は容器・包装などで使い捨て。
恐らく若い方は知らないだろうが、私が大学生だった1990年前後、環境問題として非常にホットだったイシューは「ミニペットボトル解禁」だった。自分も勉強会に参加させてもらいそれ以来ウォッチしていたのでよく覚えている。

なんとなく「ミニペットボトル 解禁」で検索したら、自分の10年前の記事が浮上してきた。

●小容量ペットボトル(WADA-blog)

この記事でも書いているが、「人間、便利なほう便利なほうに流れてしまう」。結果がプラスチックごみによる海洋汚染だ。

そして日本各地の海岸のゴミ状況が、写真とともに紹介された。
中には、茨城県神栖市の海岸写真もあった。

実は0歳から10歳まで、神栖市の砂浜まで歩いていける場所に住んでいた。当時は鹿島郡波崎町といって、茨城の南東の一番端っこ、まさに「波の崎」というべき細長い尖がった、何もない砂地の町だった。

一帯は鹿島灘とも呼ばれ、沖合では黒潮と親潮がぶつかり、鳥のくちばしのように突き出た神栖から波崎にかけての海岸には、ありとあらゆるものが流れ着いていた。電車も走っていなければ商店すらほとんどない閉鎖的なその町で、砂浜に打ち上げられた見たこともない外国語パッケージの空き容器や不思議な形をしたものを拾って眺めるのは、子供時代の楽しみでもあった。時には落命した巨大なカメが打ち上げられていたこともある。

海岸のゴミ清掃活動なんかもあったっけ。
懐かしい子供時代の思い出がよみがえってきた。

今でも毎年海開きの前に、数千人規模の市民ボランティアによるビーチ清掃が開催されている。写真を見て、次回は自分も参加してみようと思った。

●茨城県神栖市「海岸清掃」

海を漂流するプラスチックごみは、海洋生物の命を脅かしている。
たとえば海を漂うビニールをくらげと間違え飲み込んでしまい、それが蓄積して腸閉塞になってしまうなど。

つい最近も、死んだマッコウクジラを検視した結果、胃の中には大量のプラスチックが溜っていたというニュースが話題になった。

●座礁したクジラの胃から自動車部品 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

クジラやイルカが大量の海洋ごみを食べると、消化器系が物理的に損傷されるほか、胃の中のごみのせいで空腹を感じなくなり、餌をとらなくなって栄養失調に陥る可能性もある。

現在、沖縄や九州の海岸線には、おびただしいゴミが漂着しており、よく見ると中国語やハングルのパッケージのものも多い。大掛かりなビーチクリーンを行っても、一か月するともとに戻ってしまう程のところもあるという。

ただ放出させているのは中国と韓国だけではない。
日本のゴミもまた、太平洋を漂流し、他の国の海岸を汚染させている。

確かこれは太平洋のどこかの島に流れ着いたゴミの写真だったと思うが(ハワイかな)、そこには銚子漁港という文字が書かれている。私の地元だ。

日本から4000キロ離れたミッドウェイ環礁は2010年に世界自然遺産に登録され、世界最大の海洋保護区となっている。しかしここも深刻な海洋ゴミの問題を抱えている。

アホウドリの胃の中から大量のプラスチックゴミが出てきたというニュースはきっと目にしたことある方も多いのではないだろうか。

●えっ、これが全部アホウドリの胃の中に? 漂着ゴミから陸と海のつながりを考える「自然保護区ミッドウェーの生きものと海洋ゴミ」丸の内さえずり館で開催

小島氏のプレゼンテーションは非常にわかりやすかった。
海ゴミ問題を、順序立てて、そして各地の事例や写真をたくさん盛り込んで、非常に丁寧に説明してくれた。

内容は次第に具体的になってゆく。
プラスチックゴミは、分解されないことに加え「破片化」することによって危険度がさらに増す。

プラスチックゴミは分解されないものの、漂流しながら劣化し、5ミリ以下の小さな破片「マイクロプラスチック」となる。こうなるともう、回収は非常に困難。海水に混じったまま永遠に海を漂流することになる。それにより、くじらやカメ、海鳥などの身体が比較的大きな生物だけでなく、小さな魚までもが口にし内臓に溜め込んでいくことになる。

また破片化したプラスチックゴミだけでなく、例えば洗顔料に含まれる「スクラブ」や、パチンコの玉の洗浄に使われる樹脂粒なども、海に流出し深刻な問題になっているという。

洗顔料や歯磨きに使われるスクラブは、アメリカでは法的規制がかかっているが日本ではまだないという。

●"つぶつぶ"入り洗顔料使ってる?スクラブは危険!製造禁止へ世界が動き出す - Spotlight (スポットライト)

マイクロビーズの大きさは1mm以下で、消費者のバスルームや洗面所から下水処理施設のフィルターを通過して川や湖、海に、毎年何百万トンも流れ込んでいる。

詳しい内容を知りたいという方は、ぜひJEANのサイトを見てもらえたらと思う。

●海ごみの問題点 | 一般社団法人JEAN
●ごみ辞典 | 一般社団法人JEAN

海岸清掃は過去に参加したこともあり、海ゴミ問題も、プラスチックゴミの深刻さもニュースなどで見て知っていたつもりになっていた。
しかし今回小島氏のお話を聞き、お恥ずかしながらあまりに無知だったことに気付かされた。単に「マイクロビーズ」などの単語を見聞きして「認識」していただけ。それは「理解」とは違う。だからスクラブ入りの歯磨き粉も抵抗なく使ってしまっていたのだ。

記事が長くなってしまったので端折るが、パネラーとして参加されていた他の方のお話しにも、数多くの気付きがあった。

最後に、知床岬クリーン作戦を主催するNPO法人しれとこラ・ウシ代表理事であり、羅臼の宿まるみご主人の湊氏のお話も。20年も前からひとりで知床岬の海岸清掃を続けてきた方で、今もこの海岸清掃ボランティア活動に情熱を注ぎ、私財を提供してきている。

小島氏と湊氏のお話により、知床岬クリーン作戦参加のモチベーションが急速にあがったのを感じた。

関連カテゴリ