“ユーザ本位”のサイト目指して~大内範行氏に聞く (2)
そもそも何故SEOに価値を感じたのかというと、ぼくはもともとWEBプロデューサーだったんです(注:1995年~2000年までWEBプロデューサーとしてMSNに勤務)。
サイト作りにあたっては「ユーザ本位でなくてはいけない」という答えが早くから自分の中にあったのですが、実際にはなかなかできない。
当時はみな、派手なデザインを作ったり、わざわざナビゲーションを隠す凝ったデザインにしたり、映画のオープニングのようなフラッシュムービーを挿入したり。社内で承認を得られるサイトを作ろうとすると、雑誌やテレビっぽいサイトを作る傾向がありました。
「ユーザ本位」のサイト作り手段としてのSEO
個人的にはそういうサイトが好ましいとは全く思わないまま、ジレンマを抱えて仕事をしていたんです。ユーザが本当に求めているのは、もっと簡素でシンプルで、必要な情報がすぐ得られるようなサイトだろうと思っていて。
そこに近づくための方法はなんだろうと自分なりに試行錯誤していましたが、なかなかうまくいかなくて。
そんな時に「SEO」という仕組みと出会ったんです。
「その作り方じゃ検索エンジンに引っかからないよ」
これはストレートにわかりやすかった。
検索エンジンで上位表示されるためには、こういう作りのサイトにしないといけない。
それなら変えましょうということで、みんながサイトの作りを変え始めたんです。
言葉をわかりやすく出すとか、それまでゴテゴテ重かったサイトを、もっと軽くてすっきりしたシンプルなものにするようになった。雑誌の見出しを作るかのような格好いいものを目指していたのが、もっとシンプルにキーワードを提示してゆくようになって。
面白かったのは、いったんそう決めると、妙に相手も納得するんですね。
「実は、普段はこんな派手なサイトはいやだと思っていたんです」と言われる。
そもそもユーザがどんな言葉で訪れているのかという部分に関心が向き始めたんです。
ここを訪れる人がどんな気持ちなんだろうということを話し合えるようになり、
このSEOには価値があると実感しました。
それまでは「ページビュー」という言葉で語っていたのですが、
そこには全く人間味がなかったんです。
ページビューが増えれば嬉しい。減ったら「何でだろう?」と。減った人の気持ちがわからない状態が続いていました。ところがそこでアクセスログの検索キーワードが見えてくると、その人たちの気持ちに若干近づけるわけです。
なぜこの人たちは、この言葉で検索して、このサイトに来てくれて、何を欲しがって、何に裏切られたのだろう、と。
ユーザが何を求めているのかということを、
お客さんと一緒に真剣に考え、議論できるようになってきました。
ただ・・・今は自分の中で若干、SEOに対し距離を置き始めているところがあります。
SEOブームの中で、「SEO自体の目的化」という状況も起こり始めていると思います。
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●大内範行のプロフィール(大内プロデュース)
●できる100ワザGoogle Analytics(大内範行 著)
●できる100ワザSEO&SEM(大内範行 ジェフ・ルート 安川洋 江沢真紀 著)