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法的思考力を養うきっかけに~「訴訟合戦 オレ、あした、部長のこと訴えるわ」

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コンサルタントの竹内謙礼氏が執筆するビジネスノベルシリーズ(以前はPHP文庫)。
小説を読みながら、会計知識だったり、検索エンジン対策だったり、金融知識だったりの基本が身に着く一石二鳥度が気に入って何冊か買っていたが、縁あって最新刊をいただくことができた。今回のテーマは・・・

法律知識!

それも職場を舞台としたものだ。

セクハラにパワハラ、そして時間外労働、副業問題と、最近世の中でも頻繁にニュースとなるホットな話題が満載。

「部長の発言、訴えてもいいんですよ」。「殿山缶詰」の若手社員、飯尾、佐山、多賀井の3人は、日頃の鬱憤を晴らそうと「裁判」「慰謝料」などの言葉をちらつかせ、部長の久保見を謝らせることに成功する。これをきっかけに社内では部下が上司を訴える事態が頻発。容認できない課長の楠木、寺石たちは、弁護士をバックにつけ反撃を開始した。そんな中、会社が買収されるかもしれない事件が起こって......。実用ビジネスノベル!

「これって私に対するセクハラなのでは?」
「何かあると『それパワハラにあたりますよ』と言われる」

社内でのセクハラ・パワハラをめぐる話題を見聞きする機会も増えた。社内だからといって上司部下の関係だからといって人格権侵害は許されるものではない。一方でねつ造されたパワハラにより解雇される事案も発生している。

最近では有名漫画家の元アシスタントが、過去の未払い残業代を請求した出来事がネットでも話題になった。漫画家は未払い残業代を支払い、当時の勤務体系に問題はなかったものの、雇用契約書・就業規則に明記していなかったことを反省点として挙げていた。

自分の身を守るため、権利を守るため、最低限の法律の知識は必要だ。そうは理解していてもなかなか勉強する機会はなく、正直、小難しい法律について学ぶのは億劫で避けて通りがち。このストーリーの登場人物である中小企業の管理職の面々もやはり、法律には疎いまま生きてきた人たちだ。そんなわけで、法科大学院出身のひとりの若手社員が同じ20代の仲間と連携しながら、「法律」を楯に反撃を仕掛けてきた時、強く動揺してしまう。

40代中心の管理職と20代の若手社員の間の世代的背景も絡んだ軋轢ストーリーも興味深く、登場人物に感情移入しながら面白く読むことができ、かつ「証拠の保全」「因果関係の立証」など、いつか自分の身を守ってくれるかもしれない法律の知識が身に付いてゆく。

普段の生活の中ではなかなか馴染みがない法律。
あらたまって勉強しようと思っても腰が重たいものだが、こうして小説形式になっていると不思議なほどぐいぐい読める。

「『訴える』とか『訴訟』とか『裁判』とか、そういう言葉を並べられるだけで、一般の人はビクッとするじゃない」と弁護士が語るシーンがでてくるが、まさにそう。そして冷静な対処ができなくなってしまうことも。時間を見つけ、法律の基本を学んでみたいという欲求も生まれてきた。

もちろん、これを読んだだけで法律の知識が身に着くというわけではないが、法的思考力を養う第一歩としておススメだ。

ひとつだけちょっと心配になることが。
自分は40代なので「ゆとり世代問題」部分も興味深く読めたが、20代の人が読んだら「ゆとり世代だからってここまでひどくないだろ・・・偏見だ」と少し腹立つんじゃないかなあと。ま、対象読者がおそらく40代以降の管理職だと思うんで大丈夫かなと思いつつ。

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